こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

イントゥ・ザ・ウッズ

otello2015-03-17

イントゥ・ザ・ウッズ INTO THE WOODS

監督 ロブ・マーシャル
出演 メリル・ストリープ/エミリー・ブラント/ジェームズ・コーデン/アナ・ケンドリック/ジョニー・デップ/ダニエル・ハトルストーン/リラ・クロフォード/クリス・パイン
ナンバー 63
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

ひとつの願いが叶うと、また別の願いが湧き出てくる。“足る”を知らない人の心、それは深い森のように行く先が闇に呑まれ、生きている限りその中をさまよい続ける。物語は、より良い暮らしを享受したい、もっと違った運命があったはずと思うおなじみの主人公たちが、様々な冒険を通じて自らの内面を見つめ直していく姿を描く。正直者はバカをみるだけ、欲しいモノは他人を騙してでも手に入れる。さらにそんな気持ちを利用して有利な結果を導き出そうとする。普段は善良な市民の皮を被っている人々が本性をむき出しにしていく過程がテンポの良い歌で彩られ、無欲では何も得られない、強い願望が人間を進歩させると訴える。

不妊の呪いをかけられたパン屋夫妻は、魔女に「白い牝牛」「赤いずきん」「黄色い髪」「黄金の靴」を揃えれば子宝に恵まれると言われ、それらを求めて森に入る。早速ジャックから「白い牝牛」を買い、代金を魔法の豆で支払う。

その後、狼の腹から少女を救って「赤いずきん」を譲りうけ、孤塔に住む娘の「黄色い髪」を切り取り、舞踏会から抜け出したシンデレラと「黄金の靴」を交換する。しかし、ジャックが豆の木を登って天空の国から財宝を盗んだために巨人に追われた上、巨人の妻の逆鱗に触れる。その原因を作ったのは誰なのか、みなが責任のなすりつけ合いをして自分は潔白と主張するシーンは、そこに至るまでに散々彼らのエゴを見せつけられてきた観客にとっては、滑稽であるとともに己の鏡像と対面する気分になるにちがいない。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがて魔女の呪いが解け、パン屋夫妻に無事赤ちゃんが生まれる。他の登場人物も各々の胸に抱いていた“ハッピーエンド”を迎えたと思いきや、女巨人が復讐のために森に降りてくる。一応、彼らは女巨人と戦おうとするのだが、戦術は稚拙で混沌は増すばかり。“ヒーロー”や“自己犠牲”などそれこそ“おとぎ話”、あくまで人間とはこんなものという達観が強烈な皮肉となって効いていた。

オススメ度 ★★*

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