こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ブラックハット

otello2015-03-23

ブラックハット BLACKHAT

監督 マイケル・マン
出演 クリス・ヘムワース/ワン・リーホン/タン・ウェイ/ヴィオラ・デイヴィス/ホルト・マッキャラニー
ナンバー 65
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

デジタルの森の奥深くに侵入したマルウェアが小さな輝点となって目覚め、瞬く間に周囲に感染していく。二進法の配列は次々と秩序を失い、それ自身が意志を持っているかの如く増殖したウィルスはたちまちシステムを制御不能に陥れる。プロローグ、人間の目には見えないミクロの世界で繰り広げられる悪意の汚染を視覚化した映像は、ストレートにコンピューターウィルスの脅威を訴えてくる。物語は、米国人天才プログラマー中国軍技術者がサイバーテロ犯を追う姿を描く。発信元を特定できない通信、末端で動く使い走り、重火器で武装したボディガードなど、ネットワークにおいても現実においても幾重にもめぐらされた防護措置が、21世紀型犯罪の捜査の難しさを象徴する。

香港の原発とシカゴの穀物市場でコンピューターが乗っ取られる。中国軍のチェンは、事件解決には学生時代の親友・ハサウェイの能力が不可欠と考え、服役中の彼の釈放を米国政府に要請する。

米国にたびたびサイバー攻撃を仕掛ける中国軍が協力を求める厚顔さ。だが、米国も自国の施設が被害を受けているために渋々承諾する。その、政治的な駆け引きと、犯人が残したわずかな痕跡を追跡うちに米中双方の捜査員が力を合わせて行く過程が、同じ“敵”と戦えばお互いに理解は深まることを教えてくれる。さらにハサウェイはチェンの妹・リアンと恋に落ち、ここでも米中の融和が図られる。このあたり、今日のハリウッド映画がいかに中国市場を重要視しているかがうかがえる。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

手がかりをひとつずつつぶすうちに、ハサウェイたちは犯行グループのアジトがジャカルタにあると突き止める。しかし、米中政府の援護は香港で途切れ、リアンとふたりだけで組織と対決しなければならない。そこで刑務所で鍛え上げたハサウェイの肉体とケンカ術がモノを言う。ハッキングに手を染めた以上、理屈っぽい“パソコンおたく”ではなく、精神的にも肉体的にもタフネスが要求される。そんな新時代のヒーロー像が新鮮だった。

オススメ度 ★★★

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