小さな世界はワンダーランド TINY GIANTS
監督 マーク・ブラウンロウ
出演
ナンバー 68
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています
地上10センチほどの視点から見た世界では、巨木は天に届くほど高く、ドングリは岩のごとき大きさ、枯れ川は渓谷に思えるほど深い。厳しい環境ゆえいまだ開発の手が入っていない寒冷地の原生林と灼熱の砂漠、カメラはその2つの地で初めてのサバイバル挑む小さな動物の成長を追う。巣穴から通り道・ライバルや天敵との遭遇にまでレンズを向け、まるで演出されたようなドラマティックな経験を積む波瀾に富んだ物語は、大自然の中で生きる小動物の生態に対する興味以上に、“どうやって撮影したのか”という驚きに満ちている。まさしく筋書きのあるドキュメンタリー、映画の可能性を広げるまったくユニークな体験だった。
北米の森林で越冬のためにドングリをため込む若いシマリスは、年長のシマリスにドングリを盗まれているのに気づくが、あっさり追い払われる。アリゾナの砂漠ではバッタネズミの子が巣立ちの時に備えていた。
ミミズクに襲われ間一髪逃げるシマリスや、ガラガラヘビの毒牙を紙一重でかわす子ネズミなど、手に汗握る場面が目白押し。特にシマリス同士の争いは香港製ワイヤーアクションを彷彿させる空中での激しい動きとスピード感で興奮すら覚えた。さらに猛禽に追い詰められた子ネズミが大型動物の頭蓋骨に隠れるシーンなど、調教された動物が“演技”しているかよう。これらの映像を収めるために費やされた膨大な時間と手間がスクリーンからひしひしと伝わってくる。
◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆
やがて、ムカデを倒して狩りの技術を身につけた子ネズミは家族が住む巣穴から旅立ち、冬を迎えたシマリスは取り返したドングリと共に巣穴にこもって寒さをしのぐ。一つの失敗が即命とりになる弱肉強食の自然界、冒険こそが大人への通過儀礼であることは人間と変わらない。生き残りをかけて毎日を精一杯過ごす彼らの姿に思わず感情移入してしまった。
オススメ度 ★★★