こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

アンリミテッド

otello2015-03-31

アンリミテッド TRACERS

監督 ダニエル・ベンマヨール
出演 テイラー・ロートナー/マリー・アヴゲロプロス/アダム・レイナー/ラフィ・ガヴロン
ナンバー 74
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

塀を飛び越え、柵を登り、壁を伝い、ビルからビルへとジャンプする。重力を無視したしなやかな身のこなしは社会のあらゆる束縛から解放された自由を象徴している。物語は、そんなパルクールの世界に魅せられた若者が修練を積み仲間を得ていく過程で、犯罪に手を染めていく姿を描く。屋上から窓のひさし、狭い非常階段や迷路のように入り組んだ廊下など、わずかな隙間があれば体を滑り込ませ、音と気配を消して建物に侵入したかと思うと、全力疾走で追っ手から逃れる。それらのシーンで俳優やスタントマンが見せる圧倒的な身体能力はもはや芸術の域に達し、彼らの動きと表情を間近にとらえるカメラワークは臨場感に満ちている。人間の肉体とは、ここまで鍛え上げられるものなのかとあらためて驚嘆した。

自転車便ライダーのカムは配達中にビル街を縦横無尽に逃走する一団と遭遇、そのパフォーマンスに心を奪われる。メンバーの紅一点・ニキと再会したカムは早朝練習に加わり、彼らのボス・ミラーから“仕事”を依頼される。

ミラーたちは技術と体力を生かして泥棒を生業としている。狙いはあくまで不正にため込んだ金品なので警察に目をつけられることもほとんどない。ニキに恋したカムはミラーのグループで抜群の働きをするが、ミラーの要求は厳しくなる一方で、更なる危険に足を踏み入れる羽目になる。躊躇なく発砲してくるギャングを相手に変幻自在のステップで銃弾をかわすカムたちに迫るシークエンスは、目くるめくショットの連続で彼らが味わうスピードとスリルを体感させてくれる。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがて裏切りと欺瞞の中、ミラーの正体が明らかになり、カムは追い詰められていく。ニキとの微妙な仲もなかなか進展しない。そのあたりの展開は強引な部分もあるが、全編にみなぎるパルクールのエネルギーが考える暇を与えず押し切っていく。CGや派手な爆発・破壊に頼らずマンパワーだけで表現するアクションに、アドレナリンが止まらなかった。

オススメ度 ★★★

↓公式サイト↓