こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ジュピター

otello2015-04-01

ジュピター JUPITER ASCENDING

監督 アンディ・ウォシャウスキー /ラナ・ウォシャウスキー
出演 チャニング・テイタム/ミラ・クニス/ショーン・ビーン/エディ・レッドメイン/ダグラス・ブース/タペンス・ミドルトン
ナンバー 73
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

エイリアン(外国人労働者)として早朝から働く掃除婦が、いきなり“陛下”と呼ばれる身分になる。それは「シンデレラ」のような設定。意図しないうちに急激に動きだした運命に巻き込まれた彼女が、救世主になる。それは「マトリックス」を予感させる。物語は冴えない日々を送るヒロインが、宇宙の支配階層から身柄を狙われるうちに己の使命に目覚めていく過程を描く。人間はどこからきて何のために生きどこに向かうのか、その問いに答えるべく構築された壮大な宇宙空間と壮麗な惑星都市、そして宇宙船の圧倒的なヴィジュアルが視界を覆いつくし、異星人の時間のスケールが地球などちっぽけな存在にすぎないことを教えてくれる。

単調な毎日に嫌気がさしていたジュピターは卵子提供手術中に殺されかける。彼女を救った傭兵のケインは、ジュピターが宇宙に君臨する王族のDNAを継ぐ者と告げ、エイリアンの襲撃から彼女を守る。

異星人たちは地球人よりはるかに進んだ文明を持ってはいるものの、欲深さは地球人と変わらない。不老長寿を願い、資本主義的な利潤追求を一義的に考えるあたり、科学の発達の度合いがかえって格差を助長しているようにも見える。一方でジュピターが王族の証明を公式に得るための煩雑な手続きなど、官僚主義も蔓延している。加えて人口爆発を迎えた地球人は収穫を目前にした異星人の“資源”に過ぎないという皮肉。ジュピターはそれら地球と人類を取り巻く宇宙の真実を知らされるうちに、自分こそ自由とヒューマニズムの守護者と自覚し、ケインと良識ある彼の仲間の援助を受けながらサバイバルに身を投じる。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

だが、戦うのはほとんどケインで、ジュピターは添え物の域を出ない。誰が敵で誰が味方かわからぬうちに激変する環境についていけず、心細くなる気持ちも理解できなくもないが、あくまでケインの庇護を求めるのだ。なにより演出にキレがなく、めまぐるしいアクションにも緊迫感が乏しい。せめて肉弾戦でユニークな格闘術を取り入れるくらいの斬新さが欲しかった。

オススメ度 ★★

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