こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

パプーシャの黒い瞳

otello2015-04-08

パプーシャの黒い瞳 PAPUSZA

監督 ヨアンナ・コス=クラウゼ/クシシュトフ・クラウゼ
出演 ヨヴィタ・ブドニク/ズビグニェフ・ヴァレリシ/アントニ・パヴリツキ
ナンバー 81
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

掟に従って森から森へと荷馬車とともに放浪しながら暮らしている。独自の音楽やダンスが町の人々に受け入れられた時代もあった。だがたいていは偏見に満ちた目で見られ、弾圧の対象にもなる。そんななか、文字を覚えたヒロインは、同胞から罵られた挙句、知識を得て考える習慣を身につけたことを後悔する。物語は20世紀ポーランド、ジプシーたちが同化政策の下で定住を余儀なくされていく過程で、初めて彼らの日常を語り、詩を残した女性の半生を描く。“ジプシーに記憶があればつらくて死んでしまう”という彼女のセリフが彼らのたどってきた過酷な運命を象徴する。過去は忘れ未来には期待しない、「昨日」も「明日」も同じ単語を使うジプシーたちにとって、「今日」だけが重要なのだ。

1910年、草むらで生まれた赤ちゃんはパプーシャと名付けられる。成長した彼女は雑貨屋で読み書きを習い、印刷物を手に入れてたくさんの言葉や表現を学んでいく。大戦後、逃亡中の詩人・イェジに自作の詩を褒められる。

もちろん、「詩」と意識してフレーズを綴ったわけではない。それでも大地に根付いたパプーシャのダイナミックな感性は、きちんと教育を受けた者には衝撃的だったのだろう。容疑が晴れ町に戻ったイェジは彼女の詩の出版を計画するが、パプーシャにはその意味が理解できない。奥行きを感じさせないモノクロの端整な映像が、逆に寡黙なパプーシャの千々に乱れる心を投影していた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがて彼女の詩にはメロディが付き、オーケストラと共に合唱されるまでになる。ところが、ジプシーの秘密を部外者に話したせいでパプーシャはコミュニティから追放された上、窃盗で服役している。文明社会の価値観に従った安定した生活などジプシーには不要で、移動の自由こそが魂の自由。自作の詩が大勢の人に感銘を与えようとも、パプーシャに喜びはない。感情を失ったままの彼女の瞳が哀しかった。ただ、時制をシャッフルする意図が分からなかった。。。

オススメ度 ★★*

↓公式サイト↓