こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

JIMI:栄光への軌跡

otello2015-04-15

JIMI:栄光への軌跡 All IS BY MY SIDE

監督 ジョン・リドリー
出演 アンドレ・ベンジャミン/イモージェン・プーツ/ヘイリー・アトウェル/ルース・ネッガ/アンドリュー・バックレー
ナンバー 86
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

天才的なテクニックで伝説となったギタリストは、どのようにして見いだされスターへの階段を駆け上っていったか。並みの映画ならば、大いなる夢を抱いた若者が不断の努力と革新的なアイデアで世間に衝撃を与え、様々な巡り合わせの中でチャンスをつかみ取っていった姿を描くはず。だがこの作品は、主人公の真摯な態度や上昇志向、愛や苦悩とは距離を置き、いかに自己中心的の考え方しかできない幼稚な男だったかにスポットを当てる。ゆえに、創作の苦しみや挫折の失望、再起の希望や成功の陶酔といったサクセスストーリーの要素はほとんどない。代わりに、彼に直接かかわった人々の“裏切られた後味の悪さ”を体感させるまったく新しいスタイルの伝記になっている。

NYの小さなクラブに出演していたジミは、彼の才能を見抜いたリンダに声をかけられる。リンダはジミーをチャスに積極的に売り込み、チャスはジミをロンドンでデビューさせようとする。

ロンドンでのライブの後、いろいろ骨を折ってくれたリンダの前でジミはグルーピーのキャシーといちゃつき、リンダを怒らせる。その後も黒人のために戦えと提案されも拒否したり、ステージで演奏をボイコットしたり、キャシーに暴力を振るったりと、周りの人々に迷惑をかけてばかり。それは己の音楽に対して絶対の自信を持てなかった不安の裏返しなのだろう。一方で飛び入りステージでエリック・クラプトンの度肝を抜くなどの逸話も披露されるが、基本的にジミを魅力的な人物にとらえる意図は映像からは感じられない。神の指先つサイテー男、語り尽くされたエピソードに頼らずネガティブな情報を前面に出す手法は、彼もまた人間だったという共感を呼ぶ。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがて、ポール・マッカートニーの推薦を得て米国凱旋の機会を得たジミは、リンダからもらったキース・リチャーズのギターを彼女に返す。出会う運命だったのに結ばれる運命ではなかったふたりの関係が、思い通りにならない人生を象徴していた。。。

オススメ度 ★★

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