こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

アナーキー

otello2015-04-18

アナーキー Cymbeline

監督 マイケル・アルメレイダ
出演 イーサン・ホーク/エド・ハリス/ミラ・ジョボビッチ/ジョン・レグイザモ/ペン・バッジリー/ダコタ・ジョンソン/デルロイ・リンドー
ナンバー 84
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

怒り、嫉妬、裏切り、嘘、疑惑、憎悪……。負の感情が渦巻き、力のみが正義とされる世界、引き裂かれた若いカップルは自分たちの絆だけは真実だと信じている。だが、その思いも巧みな罠と甘言の前になすすべもない。物語は、警察と敵対するギャングのボスによる、娘の結婚への反対から始まる悲劇を描く。シェイクスピアの古典を説明的なセリフもそのままに荒廃した現代の町に舞台を移して再現した映像は、男と女、父と娘、母と息子、ギャングと警察、それらの協力と対立を軸に思惑が複雑に絡み合い、21世紀の感覚からすればわかりづらい一面もある。しかし、彼らに扮する俳優たちが映画的な演技をしながら演劇的な発声法をするアプローチを見せ、強烈な個性と圧倒的な存在感を示しスクリーンを引き締める。

後妻に唆されて一人娘のイノジェンを継子・クロートンに嫁がせようとするシンべリンは、イノジェンの夫・ポステュマスを追放する。ポステュマスは旅先でヤーキモーにイノジェンの貞操を疑われ、賭けに応じる。

ヤーキモーはイノジェンを口説こうとするが拒絶され、偽の証拠をでっち上げてポステュマスから指輪を巻き上げる。妻の不貞に失望したポステュマスは側近のピザーニオにイノジェンを殺せと命じるが、ピザーニオの機転でイノジェンは逃亡する。一方、シンベリンは警察と全面抗争に入り、クロートンはイノジェンを探す途中で斬殺される。その間、誤解と行き違いが頻繁に起こり、登場人物の運命は流転する。そのあたり、原典の梗概を押さえておかないと整理がつかないだろう。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

荒くれ者が銃をぶっ放し、汚職警官が反撃する。己の欲望を満たすためには暴力を厭わず殺し合いを繰り返す彼らの姿は、人間の本性などいつの時代も変わらないことを象徴する。それでも、大団円に凝縮された、愛と忠誠と寛容が残っていればこの世は生きるに値するのではないかというシェイクスピアが訴えたテーマは、清明なカタルシスを味あわせてくれた。

オススメ度 ★★*

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