こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

間奏曲はパリで

otello2015-04-24

間奏曲はパリで LA RITOURNELLE

監督 マルク・フィトゥシ
出演 イザベル・ユペール/ジャン=ピエール・ダルッサン/ミカエル・ニュークヴィスト/ピオ・マルマイ
ナンバー 95
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

息子は独立した。働き者の夫ともうまくいっている。一見満ち足りた生活、でも心の奥で何かがうずいている。それは長い時間忘れていた胸のときめき、物語はイケメンの若い男と出会った熟年のヒロインが、パリでもう一度愛される歓びに身を浸す姿を描く。女の価値は経験に裏打ちされるというパリジャンの考え方は、アンチエイジングに必死な日本女性に対するアンチテーゼで面白かった。ところが、彼女は年齢差のある若者では趣味が合わず、同年代の男に転んでしまう。男の魅力もやっぱり人生の年輪がモノを言うのだ。ふとしたきっかけで変わる彼女の“乙女心”に翻弄される男たちの狼狽ぶりが楽しい。いくつになっても恋は女をきれいにすると、イザベル・ユペールのキラキラと輝く瞳が饒舌に訴えていた。

小さな牧場を営むグザヴィエの妻・ブリジットは、隣家のパーティでスタンと名乗る青年と知り合う。優しい言葉をかけるスタンが忘れられないブリジットは、湿疹の治療と偽ってパリに出、スタンが働く店を訪ねて食事の約束をする。

ブリジットは還暦あたりの年齢のはずなのに、スタンから面と向かって“美しい”と言われのぼせてしまう。一方でスタンも若い娘には目もくれずブリジットに興味を持っているよう。だが、母子にも見える外見と生きることにひたむきさの足りないスタンに、ブリジットは未熟さと物足りなさを覚え、自らスタンとの関係を絶ってしまう。そして同じホテルに泊まるデンマーク人歯科医・ジェスパーの誘いに応じる。このあたり、ブリジットの奔放な振る舞いに女のしたたかさが凝縮されていた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

ブリジットのアバンチュールを知ったグザヴィエは、彼女もまた過去に自分の不倫に苦しんでいたと知る。それでも、長年連れ添った配偶者がいちばん大切であると自覚している。お互いに相手に浮気がばれているの知りながらもそこには触れないように気を使いあう、そんな老夫婦の繊細な機微が印象的な作品だった。

オススメ度 ★★*

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