こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ハンガー・ゲーム FINAL:レジスタンス

otello2015-04-28

ハンガー・ゲーム FINAL:レジスタンス
The Hunger Games: Mockingjay - Part 1

監督 フランシス・ローレンス
出演 ジェニファー・ローレンス/ジョシュ・ハッチャーソン/リアム・ヘムズワース/ウッディ・ハレルソン/エリザベス・バンクス/ジュリアン・ムーア/フィリップ・シーモア・ホフマン/ジェフリー・ライト/スタンリー・トゥッチ/ドナルド・サザーランド
ナンバー 97
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

賽は投げられた。己の意志とは関係なく運命が動いていく。なすべきは反乱軍と民衆の士気を高めること。いまや命は自分だけのものではない、それでも彼女は無力な家族と、共に戦った仲間のために危険に身を投じていく。物語は、独裁国家政府が主催する殺人競技会を勝ち抜いたヒロインが、反政府組織にスカウトされ、希望のシンボルという使命を全うしようとする姿を描く。もちろん戦士としてのサバイバル能力は証明済み、だがそれ以上に、反乱軍が彼女のカリスマ性を最大限に引き出そうとイメージ戦略を重要視しているあたりがユニークだ。インパクトがあり共感をもてる映像によるプロパガンダが非常に影響力を持つ、20世紀の独裁国家が取った戦略はこの作品の世界でも有効に機能するのだ。

ハンガー・ゲームから脱出し保護されたカットニスは、反乱軍に協力を要請され、政府の人質となったピータと戦友たちの奪還を条件に承諾する。彼女を主役に仕立てた動画は大きな支持を得、反政府勢力は反撃の狼煙を上げる。

政府は徹底的な弾圧で対抗すると同時に、ピータに停戦を呼びかけさせる。すっかり洗脳されやつれたピータにカットニスは心を痛めるが、もはや個人的な感傷は許されない。一方で約束を果たすための作戦は粛々と実行に移される。大規模な蜂起と志願兵による決死行、自由への渇望が巨大なうねりとなった民兵が武装した政府軍の前に立ちはだかるシーンと、精鋭部隊が敵地で繰り広げるスリリングな攻防がシンクロし、映画は壮大なヒューマニズム賛歌に昇華される。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

ところが、独裁者・スノー大統領は反乱軍の攻勢には動じない。成功したはずの攻撃、救出したはずの人質、すべてが思惑通りに進んだのをカットニスはかえって疑問に思う。罠なのか、裏切りなのか。愛や信頼など戦争にはかえって足かせになるばかり、組織の上に立つ者は時に非情の選択をしなければならない、そんな歴史の苦い教訓をこの作品は思い出させてくれる。

オススメ度 ★★★

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