こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

イタリアは呼んでいる

otello2015-05-05

イタリアは呼んでいる THE TRIP TO ITALY

監督 マイケル・ウィンターボトム
出演 スティーヴ・クーガン/ ロブ・ブライドン/ロージー・フェルナー/クレア・キーラン/マルタ・バリオ
ナンバー 103
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

降り注ぐ陽光、緑豊かな田園地帯、石畳の街道と石造りの建物、穏やかな海、滋味豊かな料理etc。アルプス以北の欧州人が抱くイメージそのままのイタリアを2人の中年男がオープンカーで縦断する。ところが本来の目的はいつしか忘れられ、彼らの旅は映画談議に変わっていく。ハリウッドの名作から英国の名優まで、名場面のモノマネを交えながら胸にたまった思いを吐き出していく姿は、親友だからこそ弱音を聞かせたくない、本心を知られたくないささやかな男のプライド。もう若くないけれどまだまだ第一線で頑張れる、ひとりでも大丈夫なフリをしているが本当は家族が恋しくてたまらない。表現者としてはバイロンの放蕩に憧れているのだろう、だが築いてきたキャリアを捨てる勇気もない。そんな、人生の終盤を前に揺れ動く彼らの心がほのかな共感を呼ぶ。

イタリアグルメ紀行の取材に赴いたスティーヴとロブは早速ピエモンテのレストランに入り、ランチを楽しむ。舌鼓を打ったもつかの間、「ダークナイト」の話に脱線すると、食事そっちのけで盛り上がる。

地元の有名なレストランを回り、宿泊するのも由緒あるホテル。しかし、素材や調理法に関する薀蓄を語るわけでもなく、ただただテーマのないヨタ話を繰り返す。その間、ロブはボートの乗組員をナンパしたりホテル従業員にキスしたりと女には抜け目がない。にもかかわらず愛妻家である矛盾。スティーヴも合流した女性カメラマンとの過去に微妙な感情を持て余している。事件に巻き込まれるわけでもない、重大な危機に陥るわけでもない。ふたりだけのドライブで、彼らはお互いをフィルターにして自分の生き方を省みているのだ。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

その後もローマ、ポンペイ、ナポリと旅程は続く。余裕のある日程ゆえに考える時間はたっぷりある。そして新鮮な体験を通じても、やっぱり前に進むしかないという結論に達する。変に設定も展開もこねくり回さない、そのぬるさが心地よい作品だった。

オススメ度 ★★★

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