こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

脳内ポイズンベリー

otello2015-05-13

脳内ポイズンベリー

監督 佐藤祐市
出演 真木よう子/西島秀俊/古川雄輝/成河/吉田羊/ 桜田ひより/神木隆之介/浅野和之
ナンバー 111
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

少し話しただけなのにずっと気になっていた年下のイケメン。街で彼と遭遇したヒロインの頭の中では、勇気を振り絞ってアクションを起こせと言う人格と、傷つくのがオチだからやめておけと主張する人格が格闘する。さらに直感や過去の経験を踏まえ、総合的に判断しようとするがなかなか決断に至らない。物語は、恋に悩む三十女の繊細な思いを描く。5種類の精神活動を擬人化したキャラクターに葛藤や逡巡、計算と不安を繰り返し演じさせることで彼女の内面の動揺を視覚化する試みは、ドタバタしすぎるが共感できる部分もあり、自分の優柔不断さをのぞき見られている気分になった。感情と理性と記憶、それらがバランスよく機能しているからこそ社会に順応できる。他愛ないラブコメを装って“心”の構造に切り込むメスは鋭い。

電車の中で早乙女に声をかけたケータイ小説家のいちこは、食事の後で彼の部屋に上がり込みそのまま一夜を過ごす。一週間後、誕生日を迎えたいちこが30歳になったと言うと、早乙女は「ないわ〜」と反応、いちこは逃げ帰る。

早乙女もいちこに好感を持っているが、いちこの突飛な行動についていけない。考えを言葉にしてくれと頼むが、いちこは口ごもる。その後、編集者にも言い寄られたりするがどちらを選ぶか明確な答えは引き伸ばす。このあたりの女心の複雑さは男からは不誠実にしか見えない。ところが、平気で男の気持ちを踏みにじっても、女には女の思考回路があると、5人の脳内キャラがわかりやすく解説してくれる。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

いい年してこれれほど恋に免疫のない女がいるのかと思えるくらいいちこは奥手だ。それは“ネガティブ”の発言権が大きいから。一方で、目を点にして純情ぶるのにセックスには積極的。精神の成長が肉体な成長に追いついていない独身女の日常は、草食系男の増加で恋愛が女の売り手市場ではなくなったという現実を反映させていた。

オススメ度 ★★*

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