こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

シグナル

otello2015-05-18

シグナル THE SIGNAL

監督 ウィリアム・ユーバンク
出演 ブレントン・スウェイツ/ローレンス・フィッシュバーン/オリヴィア・クック/ボー・ナップ
ナンバー 112
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

何が起きたのか。今どこにいるのか。これからどうなるのか。そしてなによりこの感覚は本物なのか。正体不明の相手を追っていた若者は、気が付くと施設に隔離されている。記憶の一部が欠けている。誰かが嘘をついている。体の自由が奪われたまま現実感は遠ざかるばかり。物語は、“シグナル”を受信した主人公が自分と周囲の異変に驚き、答えを求めて彷徨する姿を描く。政府の秘密研究なのか、エイリアンの干渉なのか、事実を一つ知るとその先にまた謎が待ち受けているミテリアスな展開の中で、彼は唯一信じられるものを見出だしていく。青春の終わりを予感させる哀愁に満ちたタッチの映像は喪失感を強烈に意識させ、人間の精神の限界を提示するよう。地に足のつかない芒洋とした不安がリアルに再現されていた。

IT工学を専攻するニックとジョナ、恋人のヘイリーはノーマッドと名乗るハッカーの居場所を突き止めるが、逆に拉致される。目覚めたニックは防護服を着たデイモンという男にエイリアンから感染したと告げられる。

ニックはデイモンから心理状態を調べるかのような質問を繰り返し受けるが、重要な情報は一切も教えてもらえない。一方でジョナの声を聴き、昏睡状態のヘイリーを見かける。さらに麻痺していた両足が見慣れぬ義足に変わっていたのをみてニックは脱走を決意、セキュリティの隙をついてヘイリーと共に建物の外に出る。そこは砂漠の真ん中、偶然通りがかったクルマに乗せてもらって外部と連絡を取ろうとするが、電話は通じない。彼らは行く先々でデイモンに行動を予測され、先回りされる。だが、恐怖と絶望の寸前でニックは戦い抜く道を選ぶ。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

その過程でニックが抱いた疑問への回答は提示されず、張り巡らされた伏線も回収されない。予想外の展開の数々は矛盾を抱えたつつ強引な結末に向かって文字通り暴走する。彼らがいたのは因果関係が破綻した量子論の世界、それでもヘイリーへの思いとジョナとの友情だけは真実だったことが救いをもたらしていた。

オススメ度 ★★*

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