こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

Zアイランド

otello2015-05-20

Zアイランド

監督 品川ヒロシ
出演 哀川翔/鈴木砂羽/木村祐一/宮川大輔/風間俊介/窪塚洋介/鶴見辰吾
ナンバー 115
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

10年間会えなかった一人娘。以前付き合っていたガールフレンド。苦楽を分かち合った子分。そんな、人生を共有した人々に向かって引き金を引けるのか? 人間だったころの理性は失っても心はまだわずかに残っている。それが完全に消えてしまう前に殺してくれと力の尽きかけた瞳がかすかな光で訴えている。決断を迫られた男たちは、愛と友情、思い出を封印をするしかない。物語は大切なものを回収するためにゾンビが発生した島にやってきた2組のグループが、互いにけん制しながらも脱出を図る姿を描く。“死人がよみがえって人を襲い、襲われた人はまた別の人を襲う”状況を110番にうまく説明できず信じてもらえなかったり、ずっとドッキリカメラと思っているオッサンがいたりと、逆説的な発想が妙にリアルだった。

元ヤクザの宗形は子分の武史と信也、武志の妻と共に、家出した武史の娘・日向を捜しに小さな島に渡る。宗形たちのかつての宿敵・反町たちも違法ドラッグを持ち逃げしたチンピラを捕まえようとフェリーに乗る。

チンピラはドラッグの副作用でゾンビ化、たちまち感染が広がっていく。追われる日向たちは警官や医師、漁師と合流、サバイバルを続ける。その際、ゾンビ映画好きの医師が冷静にシチュエーションを分析し何をすべきか皆に教えるあたり、作り手のゾンビに対する造詣がうかがわれる。そして、飛び散る血、食いちぎられる肉片といったゾンビとの戦いにおける視覚的効果だけでなく、銃撃戦、カーチェイスから格闘ギャルまで登場させてチープな素材をアクションで彩る。そこに脱力系のネタを仕込んで緊張感から解放しつつ、別れの哀しさも演出する構成は、ゾンビワールドを楽しみ尽くそうとするサービス精神に満ちていた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

さらに、ゾンビに噛まれた登場人物が変態する前に自らの命を絶つなど“死の美学”も貫かれる。恐怖や不安を煽るよりも情感に強く語りかけることで、過去のゾンビ映画とは明確に一線を画す作品だった。

オススメ度 ★★★

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