こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

モンキー・マジック 孫悟空誕生

otello2015-05-21

モンキー・マジック 孫悟空誕生

監督 ソイ・チェン
出演 ドニー・イェン/チョウ・ユンファ/アーロン・クォック/ピーター・ホー/ケリー・チャン/ジジ・リョン
ナンバー 48
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

腕っ節は人一倍、性格は乱暴だが、情に篤いところもある。全身を覆う金毛はタフネスの証、頻繁に瞬きする目は好奇心の強さを表している。その動きは野猿の素早さと鍛えられた人間の形式が混在し、見事なまでに“人に模した猿”を体現している。こんなことまでやるのかドニー・イェン、カンフーだけではない、様々な格闘技を体得した彼にとってこの作品で見せるワイヤーアクションとCGの過剰なコラボはまさしく新境地に違いない。物語は「西遊記」のプロローグ部分、孫悟空の誕生から五行山に閉じ込められるまでを描く。ゴールドの輝きと強烈な色彩の中で繰り広げられる大活劇は春節を祝う中華街に迷い込んだような気分になる。どこまでも派手、豪華絢爛なきらめきの洪水は、まさに中華思想を反映した怪力乱神譚だ。

魔界との戦で荒廃した天界を再建する際人間界に落ちた石に猿の子が宿る。成長して花果山の王となっていた猿は仙人に弟子入りし孫悟空という名を得て魔術と武術を学ぶが、あまりの不行状で花果山に戻される。

その後牛魔王に命を助けられた孫悟空は生き返りの術を習得するために天界の玉帝に会いに行き、馬屋番を任じられるするが、やっぱり知恵の足らない猿として気の向くまま傍若無人に振る舞う。支離滅裂な行動ではあるが、目の前の事しか見えていないという猿なりの理屈は通っているのだろう。ひたすら暴れまわる姿はむしろ潔い。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがて、牛魔王に唆されて天界に攻め上がる孫悟空と、混乱に乗じて天界を乗っ取ろうとする牛魔王、門番の二郎真君、玉帝らが入り乱れてのバトルロワイヤルとなる。もはやストーリーの整合性は二の次、慣れ親しんだ古典の英雄たちを大スターが演じる上に、竜や人身牛、さらにゴリラまで登場するこの映画は、中国の子供にとっては血沸き肉躍るワンダーランドに思えるはず。ただ、日本人が孫悟空を演じる「西遊記」を見慣れた身には、この展開はついていけなかった。

オススメ度 ★★

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