こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

サンドラの週末

otello2015-05-25

サンドラの週末 DEUX JOURS, UNE NUIT

監督 ジャン=ピエール・ダルデンヌ/リュック・ダルデンヌ
出演 マリオン・コティヤール/ファブリツィオ・ロンジォーネ
ナンバー 118
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

自分は周囲からどう思われているのか。他人の生活を犠牲にする価値はあるのか。失業の危機に立たされたヒロインは、わが身を護るため同じ職場の労働者一人一人に問うていく。物語はクビを宣告された工員が、己の雇用と引き換えに同僚にささやかな収入を諦めるように説得して回る姿を描く。図々しいお願いなのは分かっている。歓迎されないのは当たり前。それでも夫と支援者に背中を押され、折れそうな気持ちに鞭を打って彼女は歩き続ける。その過程で見えてきた、誰もが生活苦にあえぎ貧困の一歩手前でかろうじて踏みとどまっている現実。一方、選択を迫られた人々も、彼女と守るべきものを天秤にかけなければならない。それは、次は自身に起こりうることでもある。映画はそんな、良心とエゴが混在した人間の心を浮き彫りにし、弱者は切り捨てられる資本主義の真実を糾弾する。

工場に復職しようとしたサンドラは、仕事を辞めないなら16人の従業員のボーナスはないと会社に告げられる。賛否投票は月曜日、サンドラは週末を使って戸別訪問を始めるがなかなか賛同を得られない。

他の工員たちもみな経済的な事情を抱えていてボーナスを“生活給”とあてにしている。窮状を訴えても、もっと弱い立場の同僚もいる。皆善良なのだろう、しかし強くはない。厳しい競争にさらされている経営者や管理職も苦渋の判断だったに違いない。ところが、サンドラの言葉に助けられた人もいる。落胆が絶望に変わりそうになる寸前にもたらされるわずかな希望。日頃から真摯に人生に対峙し人間関係を大切にしていれば、きっと何とかなるとこの作品は教えてくれる。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

そしてサンドラに突き付けられた結論。確かに彼女は優秀でも有能でも不可欠な人材でもない。だが、人としての誇りは保っている。彼女の決断が、この陰鬱な展開に救いをもたらしていた。ただ、ダルデンヌ兄弟の弱者を見守るいつものまなざしが、今回は社会主義への回帰願望に向いているのが鼻についた。。。

オススメ度 ★★★

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