監督 堤幸彦
出演 松田翔太/前田敦子/木村文乃/三浦貴大/前野朋哉
ナンバー 125
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています
カーステレオのテープ、黒電話、DCブランド、エアジョーダン、テレホンカード、小物ポーチ、ハイレグ水着、クリスマスのディナー、オフィスでタバコを吸うOLetc. 1987年の空気をディテール豊かに再現した映像には懐かしさがこみあげてくる。そこで繰り広げられるのは “モテ至上主義”の恋愛マニュアル本には書かれていなかった、恋の始まりと終わりの切ない物語。偶然手に入れた幸福と、愛し合ったふたりに溝ができ心が離れていくつらさ、それら移ろいゆく恋人たちの心情がリアルだ。そして登場人物の状況を代弁する名曲の数々。この時代の曲ではないけれど、遠距離恋愛カップルの別れを歌った「木綿のハンカチーフ」の使い方が絶妙で、思わず涙がこみ上げてくる。
冴えない大学生・鈴木夕樹は数合わせの合コンでマユと知り合う。明るく聡明なマユの虜になった鈴木夕樹は彼女をデートに誘うが、マユはなぜか彼を“タックン”と呼ぶ。やがてふたりはクリスマスイブを一緒に過ごす約束をする。
マユに釣り合う男になるためダイエットを決心した鈴木夕樹。ジョギングをこなすスリムな鈴木は地元企業に就職するが東京転勤を命じられる。ところが、週末にしかマユに会えない鈴木は職場の同僚・美弥子と付き合いはじめる。
◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆
前半は理系デブメガネの鈴木の視点で、後半はイケメンキャリアの鈴木の視点で、マユとの出来事がスケッチされる。輝いていたマユの笑顔をいつしかウザく感じ始める、映画はいちいち日付をつけて時間の変化を延々と描くわけだが、その間、観客は細部に少しずつ違和感を覚えるという仕掛け。もちろんそれは“驚愕のラスト”への伏線なのだが、この程度のどんでん返しならば短編にまとめたほうがスピーディで引き締まった感じになったはずだ。結局、夕樹が富士通に就職したらまた遠距離恋愛の繰り返し。それとも、顔はともかく当時の結婚相手の理想である“三高男”となった夕樹の妻におさまるつもりだったのだろうか。やっぱり。
オススメ度 ★★*