こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

靴職人と魔法のミシン

otello2015-06-09

靴職人と魔法のミシン THE COBBLER

監督 トーマス・マッカーシー
出演 アダム・サンドラー/ダスティン・ホフマン/スティーヴ・ブシェーミ/ダン・スティーヴンス/メソッド・マン/エレン・バーキン/メロニー・ディアス
ナンバー 132
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

昔ながらの個人商店が時代から取り残されていく。再開発の名のもとに立ち退きが進み、居座っているのは中高年ばかり。何世代にもわたる家業なのに自分の代で最後になるかもしれない。何より、父から受け継いだ技術を伝えるべき次世代がいない。物語はNYの古い住宅街で靴修理店を営む男が、手直しした靴に足を入れるとその持ち主の外見になる魔法を身に付け、地上げ屋と戦う過程を描く。数時間おきに変身し、正体は誰にもばれない。食い逃げ、クルマ泥棒、ナンパとやりたい放題だが、美女といい雰囲気になってもベッドには入れず、時に本体と出くわすこともある。そして学んだ魔法を正しく使う術。21世紀の最先端とは距離を置いたユダヤ人社会の謎めいた空気が、おとぎ話の世界にいざなう。

黒人客から預かった靴を曾祖父の足ふみミシンで修理したマックスがその靴を履くと、鏡に映るのは持ち主の顔。足ふみミシンで修理した他の客の靴にも同じ力が宿り、マックスは母の願いを叶えてやろうと思いつく。

経済成長と技術革新がよしとされる米国の資本主義的価値観に背を向けて生きるマックスと街の人々。カネよりも人間関係、物質的な豊かさより精神的な安らぎを望んでいる。大切なのは家族やコミュニティの絆。しかし、札束攻勢をかけ、チンピラを使って脅す開発業者にまともには太刀打ちできない。マックスは変身術を使ううちに開発業者の計画を知り、阻止しようと奔走する。小心者が精いっぱいの勇気を振り絞ったその姿は小腹をくすぐる。“パワー”があっても、誰もがヒーローになれるわけではないのだ。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがて平穏な暮らしに逃げてばかりだったマックスが人生に立ち向かう決意をしたとき、さらなる秘密が明かされる。父と息子の和解を通じて、自らの意志で戦わなければ伝統は守れないとこの作品は教えてくれる。ただ、もう少し笑える小ネタが仕込んであれば洗練されたコメディとして楽しめたのだが。。。

オススメ度 ★★*

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