こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ブラフマン

otello2015-06-23

ブラフマン

監督 箭内道彦
出演 BRAHMAN
ナンバー 138
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

狭い録音スタジオに集まった4人の中年男。各自が持ち寄った曲想を披露し、お互いに評価・批判し合いながら一つの旋律に仕上げていく。みな自作が素晴らしいと思っているが他人の意見も積極的に取り入れる。ひとりが作曲しアレンジを加えていくのではなく、あくまで合議制でブラッシュアップされていくのだ。そしてメロディに重ねられた歌詞。そこで生まれたサウンドは腹の底を震わせ、詞はダイレクトに心に響く。カメラはライブを中心に活躍してきたバンドに密着、普段の彼らの姿から脱退した元メンバーの思い出、新曲ができるまでの日々を追う。「カッコつけるためにバンドを始めたのに、いちばんカッコ悪い素の部分を歌にしなければならない」と言うボーカルのつぶやきに、言葉を紡ぐ者の葛藤が凝縮されていた。

結成20年を迎えたブラフマン。ドラム担当・RONZIがボーカル・TOSHI-LOW、ギター・KOHKI、ベース・MAKOTOを紹介する。それぞれが自己や他のメンバーについて朴訥と語る中、TOSHI-LOWだけは饒舌だ

絶対的なリーダーがいるわけではない、4人ともブラフマンにとって自分は1/4の存在と言う。ところが実質的な決定権はTOSHI-LOWが持っている。他のメンバーに容赦なく“正論”を浴びせ、2人を辞めさせた過去もあるTOSHI-LOWは、KOHKIやMAKOTOに対しても厳しい態度を取ることもあるのだろう、RONNZIが調整役として機能しているからこそ長続きしている。昔からの仲間との友情は大切にしたい、一方で商品になるレベルの楽曲を要求される。若いころはもっと激しい衝突があったはずだが、今は丸く収める術を知っている。ステージでは人生の孤独と苦悩をシャウトする彼らも、成長の時期は終わり成熟を迎えている。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがて完成した音楽に、TOSHI-LOWが徹夜で推敲した詞を乗せる。つらくても現実から逃げるなというメッセージは彼らの生き方を象徴していた。

オススメ度 ★★*

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