こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ラブ&ピース

otello2015-06-30

ラブ&ピース

監督 園子温
出演 長谷川博己/ 麻生久美子/渋川清彦/奥野瑛太/西田敏行
ナンバー 151
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

夢は、いつまでに何をすべきかを具体的に書き出すことで目標になる。あこがれているだけ、想像しているだけでは未来は変わらない、行動を起こしてこそ手を差し伸べてくれる者もあらわれるのだ。物語は、うだつの上がらないサラリーマンが、唯一の友人だったミドリガメの力を借りてロックミュージシャンを目指す過程を描く。他人の視線を恐れたおどおどした態度は見下され、部屋でひとりミドリガメと戯れる姿は哀れを誘う。そんな彼の、ミドリガメへの思いを綴った歌から始まった“カメの恩返し”は、進むべき道を見定めたら、あきらめずにチャンスを待つ大切さを説く。ファンタジックだが哀しみを湛えた地下と欲望渦巻く地上を対比させた独特の世界観は、人生で成功するには少しの勇気とたくさんの貪欲さが必要だと教えてくれる。

デパートの屋上でミドリガメを買った良一はピカドンと名付け四六時中かわいがっていたが、会社でバカにされたためにトイレに流してしまう。ピカドンは下水溝の奥で、捨てられたおもちゃやペットと暮らす老人に拾われる。

特製の飴で人形や動物に言葉を授けた老人は、ピカドンには誤って“願いを叶える飴”を飲ませてしまう。良一の野心が大きいほど体が成長するピカドンは、プロになったが新曲を生み出せずに苦労する良一の前に現れ、詞とメロディを与えて去る。このあたり、彼らは二人三脚ではなくピカドンが良一を助けるばかり。その間、良一は特に努力をするわけでもなく運命に後押しされるままだ。そして会社員時代に好意を寄せていたOLに冷たくし、自分を“発見”してくれたバンドメンバーを裏切るような男になっていく。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

前半、良一のデフォルメされた日常はわずかに共感できたが、人気が出て自己チューになった彼にはまったく魅力がない。一方で人形たちの悲哀を知っているにもかかわらず、ピカドンの良一に対する忠誠心は不変。クライマックスはさらに寓話的な展開に“ゆっくりと暴走”するが、そこに教訓やテーマは見いだせなかった。。。

オススメ度 ★★

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