東京PRウーマン
監督 鈴木浩介
出演 山本美月/山本裕典/桐山漣/井上正大/佐藤ありさ/久松郁実/坂田梨香子/LiLiCo/袴田吉彦
ナンバー 141
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています
三高男、レストラン貸切デート、プレス発表会……。まるで30年近く前に大流行したトレンディドラマのような設定に、いまや日本は完全に不況から脱し、再び浮かれはじめていることを実感する。バブル期と決定的に違うのは、華やかに見える職種に就いたヒロインの人生に対するスタンスが「恋も仕事も」と欲張るのではなく、あくまで「恋より仕事」とキャリアアップを優先させているところ。企業側も正社員の採用は渋り、“何かを持っている人”しか雇わない。物語は、弾みで転職した元OLが結果を求められるプロとしての厳しさを学び、懸命に努力するうちに誰かの役に立つ歓びに目覚めていく姿を描く。姿勢正しさと脚を交差させるモデル歩きなど、山本美月のしなやかな立ち居振る舞いが美しい。
合コンでイケメン青年社長と出会った玲奈は思わずPR会社勤務と嘘をつき、友人が勤めるPR会社の面接を受ける。だが、ヒールが折れた幸運で合格、先輩社員・草壁の下でビジネスのイロハを叩き込まれる。
ダサい銀行員だった玲奈は草壁に磨かれ、たちまち魅力ある女に変身する。あらゆるマスメディアに売り込まなければならないPR商売、相手が男なら容姿やフェロモンは大きな武器になる。さらに玲奈は恋人からのメッセージから思いつた企画を提案、立て続けに大ヒットを飛ばして一躍時の人となる。そのあたりの運に恵まれただけのシンデレラストーリーは、潔いまでに玲奈の苦悩や葛藤を省きテンポよく進んでいく。奥行のないノリの良さはかえって新鮮だった。
◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆
ところが、いつもヒントをくれた恋人と別れると彼女のツキは落ち、大失敗。自分を飾っていた見せかけの鎧がいかに薄っぺらだったかに気づく。そしてあらためて真摯な態度で新製品の売り込みを立案する。すばらしいアイデアが閃いてもひとりでは実現できない、多くの人のサポートがあってこそプロジェクトは動き出すという、社会と会社のルールをこの作品は教えてくれる。
オススメ度 ★★*