こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

Dearダニー 君へのうた

otello2015-07-03

Dearダニー 君へのうた DANNY COLLINS

監督 ダン・フォーゲルマン
出演 アル・パチーノ/アネット・ベニング/ジェニファー・ガーナー/ボビー・カナヴェイル/クリストファー・プラマー
ナンバー 152
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

ミュージシャンとしてはかなりの成功を収めた。大豪邸、スーパーカー、自家用ジェット、若くてセクシーな恋人……カネで買えるものはほとんど手に入れた。だが、本当に求めていた生き方は別の場所にある気がしてならない。物語は、大ベテランのロックスターが新しい人生に挑戦する姿を描く。音楽への真摯な態度を忘れるなというアドバイスに、はるか昔に失くした情熱を再燃させた彼が、その過程で家族の信頼と絆取り戻そうとする。ビジネスの現場では、中心にいるのに違和感を覚えている。だだっ広い自宅では婚約者が浮気している。孤独に心を痛めながらも、一般人の前では大スター然と振る舞い一瞬で彼らを魅了する主人公を、アル・パシーノが圧倒的な存在感で演じ切る。

ロック歌手のダニーは、マネージャーのフランクから、40年以上届かなかった自分あての手紙をプレゼントされる。有名になったら変わるかもしれない不安へのジョン・レノン直筆の返答に、ダニーは今やるべきは何かを思いつく。

かつてダニーが捨てた女が生んだ息子・トムは中年に達し、孫娘は多動性障害。彼らに援助をしてやりたいがあっさり門前払いされる。音楽で行き詰まった時は酒やドラッグに逃げてきたダニーには、子や孫といった生身の人間相手の苦悩は受け止め方がわからないのだ。一方で、30年も発表していない新曲に取りかかりつつ、その間ホテルの支配人を口説いたりする。人前ではどんな時もエンタテイナーを演じるダニーの、根はやさしい善良な人柄がにじみ出ていた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

ところが、せっかく完成させた歌を披露する機会に恵まれても、ファンが望む持ち歌を歌ってしまうダニー。再生を決意し行動に移しても、期待外れの結果に終わるときもある。それでも、己の弱さを認めたうえで勇気を持って現実に対峙する。そうすればきっと、未来は思い通りではなくても良い方向に進んでいくはず。そんなレノンの願いが伝わってくる作品だった。

オススメ度 ★★★*

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