こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

チャイルド44 森に消えた子供たち

otello2015-07-08

チャイルド44 森に消えた子供たち CHILD44

監督 ダニエル・エスピノーサ
出演 トム・ハーディ/ゲイリー・オールドマン/ノオミ・ラパス/ジョエル・キナマン/パディ・コンシダイン/ジェイソン・クラーク/ヴァンサン・カッセル
ナンバー 157
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

“殺人はあり得ない”という建前の下、腹を裂かれた遺棄死体も事故として処理される。命令は絶対、下命する上官も面倒な出来事はできる限り隠ぺいする事なかれ主義。上層部への忠誠と服従が要求され、公務員が一度決まった方針に異議を唱えるのは死を意味するからだ。そして密告が横行し、いつ濡れ衣を着せられるかわからない息が詰まる市民の日常。そんなスターリン時代のソ連社会がリアルに再現される。物語はモスクワで起きた少年の「列車事故」に疑問を抱いた秘密警察の捜査官が、身の危険を顧みずに真相を究明しようとする姿を描く。部下に裏切られ、上司に見捨てられ、妻でさえもスパイと疑わなければならない警察国家で、良心を失わずの己の信念を貫く主人公の背中が、ヒーローの誕生を予感させる。

内務機関・MGBの捜査官・レオは妻・ライーサの潔白を主張したため降格される。だが、左遷された田舎町で、親友の息子と同じ手口で殺された少年の遺体が発見され、独自に捜査を始める。

スパイを逮捕に向かった先で、見せしめに農家の夫婦を処刑した部下・ワシリーを厳しく叱責するレオ。ところがワシリーは衆人の下で恥をかかされた屈辱を決して忘れず、レオを追い詰めていく。一方で、新たな上司・ネステロフはレオに協力、少年殺害が史上まれにみる連続殺人事件だと突き止める。このあたり、正義を求め職務に忠実な者が糾弾される不条理なシステムを機能させる、“恐怖”の力がいかに大きいかを見せつけられる。ただ展開はスピードに乏しく、もたつき感が否めない。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがてネステロフの調査をもとにレオは容疑者を探し出す。そもそもお座なりに扱われてきた各々の少年殺害事件、その過程は事実を積み上げ謎をひとつずつ解く地道な作業ではなく、意外にあっさりしている。むしろ映画が軸足を置くのは、家族すら信用できない社会主義の真実を暴くこと。“楽園”を自称する国ほど人民は抑圧されているのだ、北朝鮮のごとく。。。

オススメ度 ★★*

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