こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

HERO

otello2015-07-20

HERO

監督 鈴木雅之
出演 木村拓哉久/北川景子/松たか子/佐藤浩市/杉本哲太/濱田岳/吉田羊/田中要次/松重豊/八嶋智人/小日向文世
ナンバー 169
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

元同僚の歓迎会を兼ねたお食事会でただひとり紫煙をくゆらせる主人公。東京五輪に向けて飲食店での喫煙は不作法な迷惑行為であるという認識が一般的であるにもかかわらず、当然のごとく煙草に火をつける姿は、いかにも常識にとらわれない彼のポリシーを象徴する。まあ、それ以上に“俺はキムタク様だ”感が濃厚に漂っているシーンではあったが……。物語は東京にある欧州某国大使館裏で起きた交通事故を巡って、捜査権・逮捕権の及ばない外交特権に挑む検察官たちの活躍を描く。一検事では太刀打ちできない巨大な権力の壁、そんな中、国境や職分を越えた人と人のつながりで少しずつ突き崩していく過程はチームワークの大切さを教えてくれる。

ネウストリア国大使館裏口から飛び出したコンパニオンがクルマにはねられ死亡、運転手を取り調べる久利生は不自然さを覚え捜査を開始する。ほどなく外務省から横やりが入り、久利生自身も命を狙われる。

別件で出張してきた元恋人の雨宮も合流、ネウストリア大使館員と暴力団の癒着が浮かび上がる。その間、多岐にわたる人物が登場するが、それぞれにデフォルメされたキャラを持たせわかりやすく交通整理され、ドラマを見ていなくてもすんなりと作品世界に入っていける。説明的な映像が多いのも“誰にでも理解できる”点に配慮したのだろう、TVの視聴者を映画館に呼ぶための仕掛けが満載。そのきめ細かさはTV局制作ならでは、かゆいところに手が届く構成だ。キューブリックを冒涜したのは感心しなかったが。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがて、留守電の録音やお天気レポートなど、拾い集めた証拠の断片から久利生たちは事件の核心に迫っていく。再び立ちはだかる外交の高いハードル、それでも正義を貫こうとする検事たちの奮闘は、国益よりも良心を優先させるのが公務員の理想・法の番人の矜持であると示す。ただ、エピローグが蛇足以上に長いのが残念、久利生が雨宮を見送って終わりにした方が余韻が味わえたはずだ。。。

オススメ度 ★★*

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