こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

EDEN/エデン

otello2015-08-13

EDEN/エデン

監督 ミア・ハンセン=ラヴ
出演 フェリックス・ド・ジヴリ/ポーリーヌ・エチエンヌ/ヴァンサン・マケーニュ
ナンバー 154
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

若くして成功の味を知ってしまった。名声、ドラッグ、女、カネ、彼の周りには人が集まった。欲しいものは何でも手に入り、やりたいことはすべて実現できた。だが、成長は止まってしまう。物語はパリのクラブシーンの最先端を駆け抜けた主人公の20年に及ぶ魂の彷徨を描く。常に進化しなければ時代についていけないのに、一度張ってしまった見栄はやめられない。ガールフレンドは何人もいたが、本当に愛したのかどうかわからない。きっと心の中は不安と不満でいっぱいのはず、酒とコカインに溺れて現実から逃避する。カメラは彼の弱さを丁寧に追って、“叶ってしまった夢”にどっぷりとつかり、そこから抜け出せないまま周囲の人々から置き去りにされる苦悩をリアルに再現する。

大学生のポールはテクノポップの選曲でたちまち人気DJとなる。親友とチアーズと呼ばれるユニットを組み、ナイトクラブ経営者らと仕事の幅を広げていく。数年後、ついにニューヨークのクラブシーンに躍り出る。

その間、米国人人妻のジュリアや取り巻きのルイーズと付き合うポール。夜な夜な明け方までのお祭り騒ぎは、不確定な未来よりも目の前にある楽しみをむさぼるのが生きる証と思い込んでいるようでもある。20代前半まではそんな日常がクールても、やがて一人また一人と同じ空気を吸った仲間が脱落していく。ところがポールだけは永遠にこんな毎日が続くと信じて、ライフスタイルを変えない。大人になりたくないポールの甘えが痛々しい。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

中年に達したポールは銀行からは破産宣告され、再会したルイーズから重大な秘密を明かされ己の罪深さに気づく。そして借金を重ねてきた母にも見放され、ポールはやっと“甘い生活”を卒業する。結局、ほとんど何も生み出さなかった十数年、それでもいつか「あれがオレの青春だった」と、小説に昇華させる日が来るのだろうか。人生の皮肉をたっぷりと味あわせてくれる作品だった。

オススメ度 ★★*

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