こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

わたしに会うまでの1600キロ

otello2015-09-01

わたしに会うまでの1600キロ WILD

監督 ジャン=マルク・ヴァレ
出演 リース・ウィザースプーン/ローラ・ダーン/ミヒル・ホイスマン/ダブル・アール・ブラウン/ギャビー・ホフマン
ナンバー 203
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

わずらわしい人間関係から距離を置き大自然のなかで限界まで己を追い込めば、今とはまったく別の世界が開けてくるに違いない。そう思い立った彼女は、山のような荷物を背負い砂漠の道に一歩を踏み出す。未経験者の見立てでは刻々と変わる荒野の環境に対応できず、スタート早々トラブルに見舞われるが、折れそうになる心に鞭を打ち彼女は進み続ける。物語は徒歩で米国西部縦断に挑んだヒロインの冒険と苦難の日々を描く。孤独の中でかつての自分の行状を反芻し、記憶の中の母に教えを乞い、現実と対峙しようとする彼女は、その果てに人生の真実を見つけられるのか。乾燥地帯から雪原、岩場から密林まで様々な顔を見せるに大地に翻弄される彼女を、しっかりと見据えた映像が美しい。

敬愛する母の死を機に、夫がいるにもかかわらずセックスとドラッグ中毒になったシェリル。過去を清算するためにメキシコ国境からカナダを踏破する旅に出る。しかし、1日目から後悔の念に苛まれる。

朝から夕暮れまで渇きと空腹に耐えて歩き、テントを張り、疲労困憊した肉体に水と食料を補給する。これぞ“生きていること”を実感できる瞬間だろう。決して神秘体験をするわけでもない、それでも命とは何かを考えなぜ生まれてきたかの答えを模索する時間は、神と対話する気分だったはず。外見は少しずつ汚れていくが心身は内面から浄化されていく、そんなシェリルの変化をリース・ウィザスプーンがリアルに再現する。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

“どんなにつらい時も物事の良い面を見ようとする”母は、不幸な結婚に敗れても笑顔で育て上げてくれた。なのに、親孝行する前にガンに冒された。シェリルは、甘えを捨てるのが母への供養だと気づく。そしてそれは自身に対する再生の誓いでもある。「神の橋」から望む深い霧に包まれた川は彼女の未来。確かに見通しはきかないが、真摯に臨めばそれほど悪い出来事は起こらないと暗示していた。

オススメ度 ★★★

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