こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

S-最後の警官- 奪還

otello2015-09-02

S-最後の警官- 奪還

監督 平野俊一
出演 向井理/綾野剛/新垣結衣/吹石一恵/青木崇高/ オダギリジョー/大森南朋
ナンバー 204
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

幼児の送迎バスと巨大輸送船、ふたつのハイジャックを同時に起こし、日本の治安を根底から揺さぶろうとする男。端整な顔立ちの警察・海上保安庁の武装部隊を尻目に、幾度もの修羅場をくぐり抜けてきた孤高のテロリストを演じたオダギリジョーが圧倒的な存在感を示す。父祖伝来の島を追われ人生を奪われた怒りと憎しみ・哀しみと狂気が、国家を道連れにした破滅を呼ぶ。物語は、高度な訓練を受けた特殊部隊と、権力に復讐を目論む元傭兵率いるならず者軍団の対決を描く。実弾飛び交う銃撃戦と肉弾相うつ接近戦、反目する4部隊が同じ“戦場”で命を張りつつ信頼で結ばれていく過程は、熱い“男のドラマ”を感じさせる。女性隊員もいたけど。最近の狙撃手は「アメリカン・スナイパー」のように両目を開けたまま撃つのが主流なのか。。。

乗っ取り事件の首謀者・正木は、政府に対し首相を含む全閣僚にプルトニウム積載の輸送船に身代金を持参せよと迫る。核拡散を恐れた首相は要求に応じ閣僚と共に人質となるが、ほどなく特殊部隊が突入する。

テロリストとは交渉しない米国などとは対照的に、責任の所在ばかり探る政府首脳は優柔不断の極み。結局人命尊重の立場から正木の言いなりになる。しかし、最高司令官でもある首相およびそれに次ぐ地位の者がのこのこ出向けば、もし何かあった場合その後は誰が指揮権を引き継ぐのか。危機的状況下では安倍首相のような断固とした決断を下せる指導者が必要であると、逆説的にこの作品は訴える。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

元々は日本人の平和ボケを危惧する元警察官僚が仕組んだ茶番劇だったはずなのに、正木の暴走に歯止めがきかなくなったという設定。もちろんテロリストへの備えは重要だが、一般市民の銃器所持が厳禁されている我が国では大規模武装テロのリアリティは薄く、実感が伴わない。さらに最終目的が「抑止」と「確保」の違いがある組織が混成部隊で戦闘に臨んだらかえって混乱するのではないだろうか。

オススメ度 ★★

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