こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

アポロ11 完全版 APOLLO 11

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ロケット発射台が台車に乗せられてゆっくりと運ばれていく。足元で回転するキャタピラーの内径はすぐそばを歩く人の背丈をはるかに超える高さ、その巨大さが人類初の旅に出発するまでに費やされた人智と費用を象徴する。映画はアポロ11号の打ち上げから帰還までを膨大なアーカイブ映像で再現する。ベトナム戦争の泥沼で地に堕ちた米国の威信を回復するために失敗は絶対に許されない。指令室から見守る後方支援スタッフ、屋外特設スタンドに招待されたセレブ、少し離れた空き地でテントやキャンピングカーを持ち込んだ民間人。世界中が息をのむ中、刻一刻と運命の瞬間が迫ってくる。その緊迫感を当時の記録フィルムだけで構成した展開は、映画における編集作業がいかにエキサイティングかつクリエイティブかを教えてくれる。

1969年7月16日、3人の宇宙飛行士を乗せた宇宙船が発射される。地球を飛び立った宇宙船は予定通りに進み、月の重力圏に入るとできるだけ平らな地面を探しながら周回軌道に入る。

宇宙飛行士たちが乗り込んでから燃料漏れが確認され、指令室はざわつく。今更延期はできない、何とか修正してカウントダウンに入る。わずかな計算ミスが宇宙飛行士の死を招く。そんな重圧の中でロケットが大気圏を抜けたときのスタッフの安ど感が印象的だった。その後、宇宙空間に出たクルーたちが見た光景が挿入されるが、それはまさしく神の視点。人間の理解や想像を超越した絶対的な摂理が存在するのではないかと思わせる圧倒的な美しさだった。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

アポロ11号の歴史的事実はニュースや映画などで誰もが知っている。それでも、今回発掘された数多の人々の発言は新たな発見と感動を呼び覚ます。宇宙空間で一度着陸船を切り離して180度反転させてからドッキングしたエピソードは困難を切り抜けるアイデアとして秀逸。途方もない発想を実現させる突破力こそ人類を進歩させてきたとこの作品は訴える。それにしても当時の宇宙飛行士たちは、8日の間どうやって排泄していたのだろう。。。

監督  トッド・ダグラス・ミラー
出演  ニール・アームストロング/バズ・オルドリン/ ジャネット・アームストロング/マイケル・コリンズ/ジャック・ベニー
ナンバー  177
オススメ度  ★★★


↓公式サイト↓
http://apollo11-movie.jp/