こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

隣の影 UNDIR TRENU

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きっかけは日差しを遮る大きな木。動物の糞が問題になるとお互いに対する不信感は怒りに変わり、やがてやられたらやり返す壮絶な泥仕合になっていく。物語は隣り合った住宅に住む2組の夫婦の “ご近所トラブル” を描く。だれの仕業かは確たる証拠はない。最初はクレームのつけ方も丁寧だった。だが理解し合えないとわかると、報復はエスカレートしていく。一方で、結婚前に元恋人と撮ったセックス動画を見ていただけで妻に離婚を迫られる男。誰もが配慮を欠いている。許容の上限が低くなっている。頭の中にあるのは不満ばかり、自分の正義を主張し押し付けようとしている。そんな中で、集合住宅の集会で司会するする男はへりくだりながらも迷惑住民の顔を立て、なおかつ有無を言わさない。相手の立場を尊重することがあらゆるもめごとの解決に有効だと、彼の態度は教えてくれる。

ポーチにかかる木の影が日光浴の邪魔と隣人のコンラウズから告げられたバルドウィンは剪定に同意するが、妻のインガは反対し両家は険悪になる。その後、嫌がらせが続くが身に覚えはないと双方が言い張る。

インガは長男を亡くし精神的に不安定で、監視カメラを設置した上で次男のアトリが庭で見張りをしていても、かわいがっていた猫が失踪すると暴走する。アトリは妻にアパートを追い出され、愛娘に会うために四苦八苦している。コンラウズの妻・エイビョルグも不妊治療でナーバスになっている。男たちはなんとか丸く収めようと努力しているのに、こじれた関係をほぐそうとしない女たち。理性よりも感情、小さな齟齬も許せない彼女たちはますます周りが見えなくなっていく。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

より一層大胆かつ陰湿になっていく仕返し。インガにさらわれたエイビョルグの愛犬が戻ってきたシーンは思わずのけぞるほどの衝撃だった。そしてさらなる悲劇の連鎖。不寛容は憎悪を産み、憎悪がもたらすのは最悪の結果。暴力に走る前に対話すべきとこの作品は訴える。猫は気まぐれに旅に出るのをインガは知らなかったのか。。。

監督  ハーフシュテイン・グンナル・シーグルズソン
出演  ステインソウル・フロアル・ステインソウルソン/エッダ・ビヨルグヴィンズドッテル/シグルヅール・シーグルヨンソン/ソウルステイン・バックマン/セルマ・ビヨルンズドッテル/ラウラ・ヨハナ・ヨンズドッテル
ナンバー  179
オススメ度  ★★★


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