こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

サウナのあるところ Miesten vuoro

f:id:otello:20190803153606j:plain


自宅の離れ、森に停めたキャンピングカー、湖畔のテント、街中のビルの一角、果ては改造した公衆電話ボックス風の移動型……。どこにいても人々はサウナを楽しんでいる。映画は、サウナをこよなく愛する市民に密着、そこで汗を流す彼らのさまざまな人生を掬い取っていく。共にするのは古い友人かもしれない。たまたま隣に座った他人かもしれない。TVも音楽もない空間、手持無沙汰の時間を埋めるのは何気ない会話だけ。当たり障りのない天気の話や世間話にも飽きたのか、彼らは込み入った身の上話を語り始める。複雑な親子関係に苦しむ者もいる。犯罪から立ち直った者もいる。家族を引き裂かれた者もいる。だが、胸に溜まった澱を吐き出した後の彼らはみな生き生きとした表情に戻っている。体のみならず心もリフレッシュする、それがサウナの効能なのだ。

食事の後に、仕事終わりに、週末のキャンプに、日中の暇つぶしに、サウナに集まる人々。熱石に水をかけ白樺の葉束で背中を叩きシャワーを浴びる。彼らはそんな至福のひと時を待ちわびている。

フィンランド国民は、設置できる場所があればすぐに薪ストーブを持ち込み水蒸気を発生させる。室内は何度くらいで何分ぐらい入っているのかはわからないが、それほど暑苦しくはないようだ。汗だくになっているわけでもなく、日本人のようにサウナを出たあとに冷水を頭からかぶったりもしない。あくまでぬるま湯で筋肉や関節をほぐしているような感じがいい。いや、むしろ社交の場として機能しているのだろう。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

ひとりでサウナに入っているおっさんは、実は長い付き合いの友だちがいる。それは熊。小さなころから飼いならし一緒にサウナに入っていたのに、2メートルくらいに成長した今では、当然サウナに見向きもしない。それどころか庭のテーブルを壊したりする。でもおっさんは怒ることなく熊を見つめている。彼らは余人に理解しがたい信頼関係で結ばれている。人間ばかりではない、サウナはまたペットとの絆も深めてくれるとこの作品は教えてくれる。

監督  ヨーナス・バリヘル/ミカ・ホタカイネン
出演 
ナンバー  163
オススメ度  ★★★


↓公式サイト↓
https://www.uplink.co.jp/sauna/