こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ダンスウィズミー

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音楽が聞こえると脳内のミュージカルモードにスイッチが入り、体が勝手にリズムをとり歌い始める。本人の感覚の中では周りの人々も自分に合わせてくれているが、音楽が止まり正気に戻ると現実は死屍累々。いたたまれなくなった彼女は精神科を受診するが催眠術にかかっていると診断される。物語は、そんなヒロインが自らにかけられた催眠を解くために、東京から札幌まで自動車で旅する姿を描く。相棒はお調子者の貧乏ダンサー、全く違う世界の2人は反発したり協力したりするうちに友情を育んでいく。一流企業のオフィスから高級レストラン、暴走族のダンスバトル、そしてしょぼいステージでのショー。耳になじんだ昭和歌謡から現代のオリジナルナンバーまで、大柄で手足の長い三吉彩花のパワフルな歌とダンスに圧倒される。

エリートOLの静香はインチキ催眠術師・上田を追って、上田の元助手・千絵と共にオンボロ車で新潟に向かう。だが上田はすでに弘前に移動した後、2人は路上ミュージシャンを拾って北上する。

“突然人が歌って踊り出すミュージカルって変” と姪と一緒に言っていた静香だが、実は幼少時には歌もダンスも得意だった。しかし小学校の学芸会での失敗がトラウマになってそれ以降は封印、催眠術が大人になった彼女の潜在意識に火をつけたという設定がユニークだ。やはり人間はやりたいことをしている時がいちばん輝いている。仕事での悩み、カネのない辛さ、努力が報われなむなしさ。でも朗唱舞踏でみな忘れ、その間の充実感だけが記憶に残る。たとえそれが妄想でも楽しかった実感は本物、避けていた音楽を少しずつ受け入れていく過程が静香の成長を感じさせる。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

ただ、ミュージカルとは登場人物の喜怒哀楽、夢や希望、愛と人生のすばらしさを歌い上げ全身で表現するパフォーマンスという思い込みに一石を投じる矢口監督の試みにはあまりノレなかった。歌い踊ること自体が目的で、そこには感情も意図もない。「ウエディング・ベル」以外は歌い手に共感できなかった。

監督  矢口史靖
出演  三吉彩花/やしろ優/chay/三浦貴大/ムロツヨシ/宝田明
ナンバー  195
オススメ度  ★★*


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