こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

命みじかし、恋せよ乙女 KIRSCHBLUTEN & DAMONEN

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仕事を失った。妻子からも見放された。絶望と自己嫌悪に苛まれた男はひきこもってしまう。そんな時現れた異国の女。映画は、酒に溺れ人生に行き詰ったドイツ人がわずかに面識のあった日本人女と生活を共にするうちに、少しずつ生きる勇気を取り戻していく過程を描く。脳裏によみがえるのは幼いころ兄姉にいじめられた苦い記憶。目に映るのは思いを残して死んだ両親の霊。女と付き合ううちに、それら過去からの亡霊との距離感がつかめるようになった彼は、逃げてばかりいた現実に向き合うようになっていく。そのたびに、優しく見守りつつも妖しい視線を送る女。彼女は実在するのか、本当に父の知り合いだったのか。ふたりの気持ちが接近するにしたって疑問は深まるばかり。オープニングの日本画がその正体を暗示する。

二日酔いで寝込むカールの部屋にユウと名乗る女が上がりこんでくる。ユウはカールの亡父の知人、カールはユウとともに田舎の別荘に移り、ふたりだけで暮らし始める。

ユウのおかげで霊感に目覚めたカールは、両親の霊と会話し黒い霊に脅える。同時に疎遠だった兄とも連絡を取ったりするが、仲たがいを収めるほどにはならない。それでも日中正気でいられる時間は確実に長くなっている。ところが、ふがいない姿に父が始めた説教にカールは深く傷つく。このあたり、カールのアルコール依存の原因からユウの誘惑を拒む理由、さらに性的嗜好の変化など、曖昧にぼかされた要因が提示されるが、どれも物語をけん引するほどの力はなく低空飛行のまま。酩酊状態から抜けきらないカールの、ぼんやりとした脳内を暗喩していたのだろうか。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

重傷を負って “チンコを失った” カールは、理想の自分から解放されたと感じ、ユウに会うために日本へ行く。湘南の古い旅館で待っていたのはユウの祖母。そこで聞かされた真実にカールは茫然とするが、逆にカールは生き続けることこそ、先に死んだ者への供養になると気づく。「ラスト樹木希林」以外に価値の見いだせない作品だった。

監督  ドーリス・デリエ
出演  ゴロ・オイラー/入月絢/ハンネローレ・エルスナー/エルマー・ウェッパー/樹木希林/フェリックス・アイトナー
ナンバー  196
オススメ度  ★★


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