パパは不機嫌だった。ママは無関心だった。寂しさを紛らせてくれたのは家にあったピアノ、少年は習うでもなく身についていた絶対音感を目覚めさせていく。物語は飲酒ドラッグ同性愛に溺れ人生を見失ったシンガーソングライターの半生を綴る。音楽だけが心を解放してくれた。歌を作ることで友人もできた。そして駆け上がっていったスーパースターへの階段。だが夢に見た成功の先にあったのは限りない孤独。信じて裏切られ、わがままを言っては周囲を困らせる。やがて現実を忘れるためにさらなる悪癖に染まっていく。自分を見てほしかった。辛いときは励ましてほしかった。怒った後でも優しい言葉をかけてほしかった。普通の家庭ならば経験できたはずの、両親に大切にされる喜び。そんな主人公の、ただ愛してほしかったという魂の叫びが胸にしみる。
エルヴィスの影響を受けたレジーはバックバンドのピアニストとして食いつなぐ日々。エルトン・ジョンと改名しエージェントに曲の売り込みに行くと、バーニーが書いた詞の作曲を依頼される。
出来上がった歌は上出来で、プロデューサーからもっと歌を作れと命令されたエルトンとバーニーは作詞作曲に没頭、アルバムがヒットすると米国に進出する。そのころエルトンは同性愛に気づきバーニーとの関係に微妙な変化が表出する。そこに、マネージャーになると現れたリードにエルトンは恋に落ちる。ビジネスパートナーでありゲイ恋人でもあるリードは、少しずつエルトンを支配するようになる。その後は名声を高めるとともに昔の仲間を切り疑心暗鬼になるありきたりな轍を踏む。それでも、集団セラピーから場末のクラブでの狂乱まで彼の喜怒哀楽に寄り添ったミュージカル仕立ての映像は、感情が昇華された歌とダンスの興奮と感動に満ちていた。
◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆
エルトン自身まだ存命中で、映画化されたのは、様々な中毒から立ち直り魂の安寧を得るまで。両親の拒否反応は、古い価値観に生きていた彼らが我が子に同性愛的性向を感じていたからだろうか。。。
監督 デクスター・フレッチャー
出演 タロン・エガ-トン/ジェイミー・ベル/ブライス・ダラス・ハワード/リチャード・マッデン/ジェンマ・ジョーンズ
ナンバー 199
オススメ度 ★★★
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