こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

アス US

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人里離れた別荘に分身がやってくる。同じ体格同じ顔、動きまでコピーされている。彼らは確固たる意志とコミュニケーション能力を持っている。誰がなんのために、理由はわからない。物語は保養地で休暇を楽しむ4人家族が、アイデンティティ乗っ取ろうとする己の分身と闘う姿を描く。現状がまったくのみ込めずうろたえるばかりの父。交渉の窓口に立ち果敢に危機を乗り切ろうとする母。恐怖におびえながらも腹をくくる娘。機転を利かせてピンチを切り抜ける息子。分身たちは基本的に本体がターゲット。一方で、分身の肉体も血を流し殺すことができると知った一家は、武器を手に反撃する。得体のしれない者に襲われる恐怖以上に、理解を越えた状況を信じられず現実から目を背けようとする人間の心理が繊細に再現されていた。

幼いころ遊園地で迷子になった時のトラウマを引きずっているアディは、家族旅行で同じ遊園地を訪れ不吉な予感を覚える。その夜、別荘に赤い服を着た4人組の分身が現れる。

アディの分身がリーダー格で、分身として過ごしてきた30年以上にわたる苦労と不満をアディにぶつける。彼らが暮らす地下世界では地上の人々と同じだけ分身が存在し別の人生を送っているが、自由はなくウサギの生肉を食べて生きている一種の並行次元。かつてアディが迷い込んだ「自分探しの館」が2つの世界の接点で、アディと分身が交わったのがきっかけでバランスが崩れたという設定。このあたり、パラレルワールドものの定石を踏んでいるが、彼らがリアル世界に対して抗議と復讐を望んでいるあたりが目新しい。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

友人宅に避難したアディたちは、分身が本体を惨殺しているところに出くわし、他にも一斉に分身たちが本体を殺し始めたと知る。交渉の余地があったアディたちはむしろラッキーだったのか。そして明かされる真実。なぜアディの分身だけが言葉を話せるのか、本当に恐ろしいのは未知なるものからの襲撃ではなくエゴに満ちた人間の心だと、アディの正体に気づいた息子の視線が訴えていた。

監督  ジョーダン・ピール
出演  ルピタ・ニョンゴ/ウィンストン・デューク/エリザベス・モス/ティム・ハイデッカー/シャハディ・ライト・ジョセフ/エバン・アレックス/td>
ナンバー  213
オススメ度  ★★★


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