こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

人間失格 太宰治と3人の女たち

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“人間は恋と革命のために生まれてきた”。彼を愛した女たちはその言葉を実践するかのように愛欲に塗れ、身も心も男に尽くす。男にとって彼女たちとの関係は命がけのゲーム、時に死の直前まで自らを追い込み、その体験を文学に昇華していく。物語は、己の弱さをさらけ出すことでベストセラーを生み出した流行作家の破天荒な後半生を描く。何度も自殺と無理心中を図っては果たせずにいた。貞淑な妻と子供たちがいながら堂々と愛人を作った。そんな生き方を批判する者も多かった。だが、人々は心の底で彼の自由をうらやんでいる。カラー映画がまだ総天然色と呼ばれていたころのような色彩感覚でビビッドに再現された無頼派の日常は、理解者を裏切り続けて他人の期待に応えるという矛盾の連続。にもかかわらず女にもててしまうのはやはり才能のなせる技なのか。

愛人の一人との心中に失敗した太宰は歌人で別の愛人・静子の日記を借り受け、「斜陽」を発表、社会的ブームを起こす。その後、美容師の富江と出会い、彼女の部屋に入り浸るようになる。

太宰の妻・美和子は第3子を妊娠中だが、太宰の浮気には一切興味を示さないふりをして、たまに傷ついて帰宅した彼を迎え入れる。嫉妬で胸がかきむしられているはずなのに、悔しくて悲しくて腹立たしいはずなのにじっと耐えている。美和子が、小さい娘が床にこぼしたインクを息子と共に顔に塗りたくって戯れるシーンは、情念と怨念それでも愛する子供たちが支えになっている複雑な感情が入り乱れ、彼女を演じた宮沢りえの美しさが際立っていた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

肺病が悪化しても太宰は不摂生な生活をあらためず、富江の世話になりながら「人間失格」の構想をまとめる。富江は以前にもまして “死” の誘惑に抗えなくなっていく。一度は富江との入水心中に同意したのに、いざ実行しようとすると太宰は尻込みする。妻と複数の愛人、文壇の取り巻きと大勢のファン。多くの人々に囲まれた太宰は孤独と無縁だったのか。そのあたり大胆な解釈で見せてほしかったが。

監督  蜷川実花
出演  小栗旬/宮沢りえ/沢尻エリカ/二階堂ふみ/成田凌 /千葉雄大/瀬戸康史/高良健吾/藤原竜也
ナンバー  219
オススメ度  ★★*


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