こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

HELLO WORLD

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時空のひずみから飛び出してきた男は10年後の自分。今がどんな状況なのかをきちんと理解していて、これから何が起きるかもわかっている。そんな彼が指南してくれたのは、堅物クラスメイトとの恋。物語は、内向的な高校生と彼の日常に突然闖入してきた未来の己のアバターが、力を合わせて愛する人を危機から救おうとする姿を描く。高度にIT化された近未来社会、人々はテクノロジーに依存して暮らしている。それでも、過去に干渉してはならない。歪みが生じると自動的に修正処置がとられる。現実とバーチャルの区別がまったくつかない世界、意思とは、感情とは、そして生きるとはどういうことなのかを問うテーマは、人間の存在意義そのものを突き詰めているようだ。もしかして我々の意識自体が何者かに操られているのでは、という気分になった。

冴えない高校生活を送る直実は、別次元から来た分身・カタガキの指導の下、同じ図書委員の瑠璃に接近、古本市で売る古書を集めるうちに親しくなる。だがカタガキ には秘めた意図があった。

瑠璃とのきっかけはうまくつかめた。不自然に思われない程度に接触できた。協力して作業するうちに信頼関係も築けた。告白も大成功。デジタルに頼らず、意志が強く、読書家で几帳面な瑠璃のキャラは萌え要素がいっぱいだ。しかし、カタガキは瑠璃がほどなく雷に打たれると知っていて、それを阻止するためにやってきたと直実に打ち明ける。カタガキにとっての現在を変えるために、過去である直実たちの運命をいじる。ありがちな展開ながら、鳥居の赤、町家の古さといった京都の町が細密に再現された映像は目新しかった。登場人物には京都弁をしゃべってほしかったが。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

実は直実がいるのはデジタルの世界で、直実もまた記録されたデータに過ぎない。カタガキはそのスパコンを操作する研究者という「ループ」や「マトリックス」に似た設定。やがて暴走したプログラムが現実世界を侵し始めるのだが、入れ子の数を増やすだけでなくもうひとひねり欲しかった。

監督  伊藤智彦
出演  北村匠海/松坂桃李/浜辺美波/福原遥/寿美菜子/ 釘宮理恵/子安武人
ナンバー  230
オススメ度  ★★*


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