こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

EXIT

 

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足元から迫り来る死の霧、生き延びるためにはより高いところに逃げるしかない。クライミングで鍛えていた彼らはわずかな希望を胸に建物の外壁を登り、ロープでビルからビルへ渡り、屋根の上を疾走する。物語は、繁華街で有毒物質を撒きちらす無差別テロに遭遇した元大学山岳部員の男女ふたりが、力を合わせて難局を切り開き大勢の命を救う姿を描く。卒業しても無職のままだった男は、コクってフラれた後輩女子にいいところを見せたい。後輩は上司のセクハラに耐えながら職場にしがみついている。そんな時に起きた大事件。男は身を挺して逃げ遅れた人々を守ろうとする。ぎこちなく接していた彼女も、彼の利他的行為に共感して行動を共にする。人間の価値は、絶体絶命に陥った時に何をしたかで測られるとこの作品は訴える。

祖父の古希祝の中、会場ビルの周辺が致死性のガスに覆われる。出席者のヨンナムと副店長のウィジュは招待客を屋上に避難させようとするが、ドアは外側からしか開かない。

求職中もトレーニングだけは欠かさなかったヨンナムは最上階の窓ガラスを割り、外壁を伝って屋上に出ようとする。ところどころに出張った小さな突起物に指先をかけ、少しでもスペースがあればつま先を乗せて手を休め、ウィジュから預かったカラビナを信じてひたすら屋上を目指す。ところが、ヘリの救助カゴは重量オーバー、ヨンナムとウィジュは他人を優先させ屋上に取り残される。建物の中に残っていたロープやビニール、テープ、マスクで防護服を作りさらなる脱出を繰り返すヨンナムとウィジュ。危機また危機の連続の中で勇気とやさしさを失わないヨンナムに対しウィジュもまた強くなっていく。お互いに対する信頼こそが愛に発展するのだ。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

自力で切り抜けるしかない状況に追い込まれたふたりは、ドローンにライブ中継されたのをきっかけに多くに市民の協力と励ましを受ける。数十機の民間人ドローンが彼らの前に道を示すシーンは、小さな善意も集まれば大きな力になると教えてくれる。

監督  イ・サングン
出演  チョ・ジョンソク/ユナ
ナンバー  247
オススメ度  ★★★


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