こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

クロール ―凶暴領域―

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浸水が始まった地下室で目が合ったのは巨大なワニ。ぬかるんだ地面で短い足を回転させながら、天井が低く狭いスペースを這いまわる。地上への逃げ道はふさがれた。ハリケーンによる大雨で水かさは刻一刻上昇する。物語は、河川の氾濫で孤立した一軒家で繰り広げられる父娘のサバイバルを追う。周辺は避難地域に指定され警察を呼んでも応答はない。激しい風雨で救助は期待できない。1匹だけと思っていたワニはいつの間にか増えている。そんな絶望的な状況の中でも父と娘は生き抜く決意を固め、絶対にあきらめないと誓う。何度もかみつかれた。溺れそうになった時もあった。それでも救出を信じ突破口を見つけようとする。市場原理が重んじられる米国、人生は戦いの連続で負けないことが生き残ることだと彼らの奮闘は教えてくれる。

離婚してひとり暮らしの父を心配したヘイリーは、警官の制止を振り切り、すでに暴風雨圏に入った実家に向かう。ヘイリーは地下室で父を発見、足を骨折し気を失って倒れていた彼を介抱する。

1階に引き上げようとすると突如ワニに襲われる。太いパイプの背後に逃げるが、そこからは階段は使えない。息を吹き返した父は様々な指示をヘイリーに出すがなかなかワニの目をごまかせない。人影を見つけ合図を送るが、むなしくワニの餌食になってしまう。水かさが増し自由に泳げるようになるとワニたちは攻撃的なる。歩くスピードと泳ぐスピードが極端に違い、鋭い歯が並んでいてもくちばしの先ならば噛まれても振りほどける。そのあたり、さんざん映画のテーマになってきたサメとはまったく違う生態がディテール豊かに描かれ新鮮だった。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

そして堤防が決壊、2階部分までが浸水するほどの大量の水が住宅地に流れ込む。水泳選手のヘイリーは水を得た魚のように泳ぎ回れるが、ワニとの競争は紙一重。間一髪と危機一髪を繰り返し回避しながら脱出経路をたどる過程はスリル満点、一軒家の中という狭い空間を立体的に使った映像はラストまで緊張感マックスだった。

監督  アレクサンドル・アジャ
出演  カヤ・スコデラリオ/バリー・ペッパー/モーフィド・クラーク/ロス・アンダーソ/ホセ・パルマ
ナンバー  252
オススメ度  ★★★


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