こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

マチネの終わりに

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携帯電話があれば簡単にコンタクトできるはずだった。SNSでつながっていればいつでも会えるはずだった。だが運命はふたりを遠ざけ、引き裂き、別々の道を歩ませてしまう。物語は、人生の半ばを過ぎた男女が互いに強烈に惹かれあいながらもすれ違う姿を描く。起きてしまった出来事は変えられない。でも未来を望みどおりにすれば、事実は同じでも過去を思う感情は違ってくる。そして、結婚予定の女を「だから止めに来た」といって口説く男。歯の浮くような気障なセリフが全編にちりばめられた映像は婚期を逃した40女の妄想のよう、ヒロインを演じた石田ゆり子もまったくジャーナリストぽく見えない。そのあたりに、この作品の “嘘くささの中の真実” ともいうべき愛に対する純粋さが凝縮され、リアリティを超越した楽しさに満ちていた。

ギタリストの蒔野はパリから一時帰国中の洋子を紹介される。その後、テロに遭遇した洋子とスカイプで連絡を取るが、彼女の薬指に光る指輪を見た蒔野はマドリード公演の帰路パリに寄る。

金儲け主義の婚約者より自分の気持ちに寄り添ってくれる蒔野を選んだ洋子は、今度は日本で蒔野との再会の約束をする。その際、メッセージアプリでやり取りするのだが、ふたりは既読すぐに返信を繰り返すのに決して直接会話をしない。聞いてしまったらそのまま消える音声通話よりも、ずっと履歴が残るテキストのほうが、後になって読み返せるからいいのだろうか。ところが、緊急事態に蒔野はスマホを紛失し、コールしなかったことを後悔する羽目になる。まどろっこしくじれったい、それでも綴られた言葉の方が重みを感じる。いかにも現代的な設定だった。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

相手の目を見つめながら恋する思いを口にする。遠い外国までわざわざ訪ねていく。トラウマを忘れさせるために温かい料理を作る。感情が落ち着くメロディを爪弾く。蒔野の言動はいちいち女心をとろけさせるやさしさと思いやりにあふれている。まさに男にとっての恋愛指南書、マネするオッサンが続出する気がする。。。

監督  西谷弘
出演  福山雅治/石田ゆり子/伊勢谷友介/桜井ユキ/木南晴夏/板谷由夏/古谷一行
ナンバー  261
オススメ度  ★★★


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