こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

グレタ GRETA

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失くした人はきっと困っているだろう。親切心から地下鉄内で拾ったバッグを持ち主に届けると、相手はとても感じのいいおばさんだった。物語は、母を亡くしたばかりのヒロインが、娘に先立たれた母親に命を狙われる過程を追う。にぎやかな街で暮らしているからこその孤独。親友はいるけれど性格は正反対。喪失感はまだ完全に癒えていない。だが、おばさんはそんな自分に母親のように接してくれる。ところが意外な場所で見つけてしまった衝撃的な真実。電話番号を交換してしまった。住所や勤務先まで知られている。拒めば拒むほど嫌がらせはエスカレートする。得体のしれない人々が大勢生活している大都会で、それほど親しくもなっていない他人に不用意に連絡先を教えてしまった恐怖がリアルに再現されていた。

ハンドバッグを返しに行ったのをきっかけにフランシスとグレタは母娘のような仲良しになる。グレタから夕食に招待されたフランシスはクローゼットに同型バッグを複数発見、出会いは罠だったと気づく。

無視しても何度も電話がかかってくる。勤務先を見張られている。ルームメイトのエリカを尾行してその写真をリアルタイムで送ってくる。グレタのすさまじいまでの執念はフランシスを疲弊させる。一方でグレタに詳しいカウンセラーから彼女の狂気を聞かされる。逃げ続けるか、対峙するか。警察はあてにならず、解決策も浮かばない。常にフランシスの行動を読み先回りするグレタに、異常だが知能は高いサイコパスの特徴が凝縮されていた。放置されたバッグは “爆弾と疑って警戒する” というエリカの言葉がNYにおける人間関係の距離感を象徴する。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

グレタはフランシスを隠し部屋に監禁する。父が雇った探偵もグレタは一蹴。他人に対する無関心が世知辛い現代社会において、無防備な善意や良心を悪用する人間がいることをこの作品は警告する。ただ、夢オチの中の夢オチなど小手先の技巧は必要ない。また、バッグが凶悪な男に拾われたらグレタはどうするつもりだったのだろう。。。

監督  ニール・ジョーダン
出演  イザベル・ユペール/クロエ・グレース・モレッツ/マイカ・モンロー/コルム・フィオール/スティーブン・レイ
ナンバー  268
オススメ度  ★★*


↓公式サイト↓
http://greta.jp/