こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

嘘八百 京町ロワイヤル

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口八丁手八丁、二束三文のガラクタを高値で売り、珍品逸品は安値で買いたたく。だが、素人相手なら通じる手口も、同業者には通じないどころか逆に足を掬われかねない。物語は、相変わらず冴えない古物商と売れない陶芸家が、今度はシングルマザーと手を組んで文化財事業を食い物にする悪徳業者を罠に嵌める姿を追う。疑り深いくせに和服美人の話はすぐに信じてしまう。損害はないが手玉に取られたことにプライドがいたく傷ついた。狭い業界内では露骨な足の引っ張り合いが繰り広げられる。騙されたらもっと大きな仕掛けでやり返す執念と、二転三転する展開、アッと驚くトリックetc. 権威を振りかざす鑑定家のさじ加減ひとつで価値が変動する骨董業界をシニカルに笑い飛ばすスタイルはこの作品でも健在だ。

清楚な熟女・志野に一杯食わされた小池と野田は、志野を問い詰める。そこで2人は彼女から古美術センターの秘密を聞かされ、京都の骨董業界を牛耳る嵐山堂が裏で糸を引いていると教えられる。

嵐山堂には煮え湯を飲まされた経験のある小池と野田は、嵐山堂に一泡吹かせたいという志野の意思に共感、“織部の茶碗” の贋作で嵐山堂の鼻を明かす計画を練り、飲み仲間の贋作屋集団に声をかける。安上がりな現場レポートで放送枠を埋め広告費を稼ぐローカルTV局の制作体制に対する皮肉が効いていて、それを逆手に取った大掛かりな作戦はかえってTV屋の心意気を奮い立たせるあたり、己の能力を十分に発揮できるチャンスを与えられた人間の底力を感じさせてくれる。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

小池は撮影所にセットを設えて入念なリハーサルを行う。一方、野田は、織部の贋作づくりに余念がない。そして敵のテリトリーに乗り込んでの大芝居。鮮やかな手並みと想定外の出来事に出くわした時の機転、それらが茶の湯を嗜む人々の優雅な振る舞いの裏に隠された強欲を浮き彫りにしていく過程はスリリングかつコミカルで、最後まで予想を覆してくれる。アホの坂田扮するオッサンが期待通りボケてくれてうれしかった。

監督  武正晴
出演  中井貴一/佐々木蔵之介/広末涼子/友近/森川葵/坂田利夫/前野朋哉/木下ほうか/塚地武雅/加藤雅也/竜雷太/山田裕貴
ナンバー  257
オススメ度  ★★★★


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