こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

決算!忠臣蔵

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開城か籠城か、討ち入りかお家再興か。侃侃諤諤の議論を交わす武官に対しこれからの生活もろもろを憂える文官たち。何をするにもしないにも先立つものはカネ。映画は、忠臣蔵の一部始終を財務面から考察する。理不尽な沙汰に血気逸る武闘派、武士のプライドを守りたいが肚を括れない中間派、家族の未来を気に掛ける穏健派。120人余りの藩士、もちろん考え方はそれぞれで身の処し方も当人の意思に任される。そんな侍たちに交じってひたすら算盤を弾き、今や収入が途絶えた藩の財政を少しでも長持ちさせるため出納を厳密に管理する役目を果たそうとする侍がいる。日本人なら誰もが知っている復讐譚に会計の角度からスポットを当てたこの作品は斬新、忠義や愛や夢や希望などではなく、カネこそが世の中を動かしていると訴える。

お取りつぶしとなった赤穂藩藩士は家老・大石の下に集合、今後の身の振り方を合議する。勘定方の矢頭はあっさり城を明け渡し浪人になった方が金銭的にかなり得をすると数字を用いて説く。

一文30円、一両12万円。義士たちの活動にかかるコストをいちいち現代の貨幣価値に換算されて表示されるので18世紀初頭の物価がわかりやすい。道具や武具・食べものの値段はそこそこ、人件費もそれほど高くない。一方で上方-江戸間の移動にかかる時間と費用は21世紀の10倍以上。交通機関の発達がいかに近代化に寄与しているかを改めて確認した。そしてコストパフォーマンスを顧みない番方に頭を悩ませる役方の苦言も、現代のサラリーマン社会そのもの。“カネ勘定ができない侍はでくの坊” の言葉に、経理の大切さが集約されていた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

その後、討ち入り決起集会を開くが、そこでも予算不足が判明。メンバーを半分以下に絞り決行を3か月前倒ししてなんとか帳尻を合わせる。クライマックスの吉良暗殺はあっさりスルーするあたりも潔い。ただ、映像の流れが悪く吉本芸人によるテンポの速いしゃべりとかみ合っていないのが残念。話の展開にももっとメリハリをつけてほしかった。

監督  中村義洋
出演  堤真一/岡村隆史/濱田岳/横山裕/荒川良々/妻夫木聡/大地康雄/西村まさ彦/木村祐一/鈴木福/波岡一喜/桂文珍/笹野高史/竹内結子/西川きよし/石原さとみ/阿部サダヲ
ナンバー  280
オススメ度  ★★*


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