こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ドクター・スリープ

f:id:otello:20191202105642j:plain

忌まわしき死の怨念を撃退した少年は大人になってもトラウマに苛まれていた。それを克服したと思ったら今度は同じパワーの少女と念を通わせるようになった。物語は、思念を他人の脳に送り込む能力を持つ男と少女が、穢れた不老長寿集団と闘う姿を描く。心を読み、操り、自由を奪う。恐怖や怒りを吸い取って肉体を若返らせる。そのカルト集団は、人知れず数百年の時を生きてきた女を頂点として、子供たちを狩っては彼らの生気を抜き、死体を埋める。彼らの悪行をキャッチした霊感少女は男に協力を求め、2人は抜群のチームワークでカルト集団を追い詰めていく。気づかれずに相手の頭の中に入る。相手に “攻撃している” と思わせて罠にはめる。二重三重のトリックと虚々実々の駆け引きは、ホラーの枠を超えたコンゲームに昇華されていた。

霊感の強いアブラは、ローズ率いる老若男女のグループが野球少年を拉致して殺したことを察知、ダニーに念を送って知らせる。ダニーは親友のビリーと共に少年の死体を探しに行く。

己のパワーの正しい使い道を学ばないまま中年になってしまったダニー。一度は酒におぼれ自堕落になっていたが、今は平穏な暮らしに満足している。アブラの念は非常に強力で、ダニーやローズさえも凌駕している。だがアブラはまだうまく使いこなす術を知らず、ダニーに頼らなければローズたちと闘えない。ダニーにとってアブラの頼みは、古傷に触れる以上に、決着をつけるべき過去に向き合う旅でもある。逃げていては前へは進めない。何よりアブラの未来を守らなければならない。面倒を避けてきたダニーが腹をくくるシーンは、人生を賭けるに値する出来事は突然やってくると教えてくれる。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

そしてダニーは自らの原点でもある展望ホテルにローズを誘導する。その過程で、時々新鮮な生気を補給しなければ急激に老化するローズの仲間が、銃弾を浴びると煙のように消えていくのが印象的。命とは、肉体とはこれほどまでにはかなく、あっけないものだと彼らの断末魔は訴えていた。

監督  マイク・フラナガン
出演  ユアン・マクレガー/レベッカ・ファーガソン/カイリー・カラン/カール・ランブリー/ザーン・マクラーノン
ナンバー  285
オススメ度  ★★*


↓公式サイト↓
http://wwws.warnerbros.co.jp/doctor-sleep/index.html