こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

THE INFORMER 三秒間の死角

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取引相手を死なせてしまった。しかもその男はNY市警察のおとり捜査官、尻拭いのためにボスから下った命令は、刑務所内でのドラッグ売買を一手に牛耳ること。物語は、FBIの情報屋として働く麻薬ディーラーが信じていた者に裏切られ、4つの組織と敵対しながらも生き延びようと奮闘する姿を描く。弱みを握られているがゆえに選択の余地はない。自分の身だけではなく妻子の安全も守らなければならない。誰を味方につけ、誰を欺くべきか。誰ひとりとして信頼できないのは確か。FBIに見捨てられ、市警の刑事から脅され、ギャングたちに命を狙われ、看守からは虐待を受ける主人公。彼の戦いには、知恵も度胸も経験もあって腕っぷしが強くても、組織の後ろ盾がない孤独と悲哀がにじみ出ていた。

ポーランド系ギャングの売人・ピートは刑務所内での勢力図を冷静に見極め、悪徳看守を通じて黒人グループとのルートを作る。しかし、FBIのウィルコックスはピートを切り捨てろと上司に命じられる。

一方で、おとり捜査官殺しの真相を追うグレンズ刑事は、 ウィルコックスとピートの関係に気づき、執拗に彼らに付きまとううちにからくりを見抜いていく。刑務所内の黒人グループに影響力を持つクレンズはピートに圧力をかけ、ピートは徐々に孤立していく。このあたり、ピートを巡る捜査機関同士の軋轢やギャング間の縄張り争いなどといった人物相関図が非常に複雑。誰もが腹に一物抱えた感情がリアルに再現され、それぞれのエゴがピートを追い詰めていく。情報屋の命など塵同然、そんな中、心を痛めるウィルコックスとあくまで真犯人を見つけ出そうとするグレンズの執念が人間味を感じさせる。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

絶体絶命四面楚歌となったピートは、看守を人質に立てこもる。抹殺するチャンスと狙撃手を送り込むFBI管理官。ところが、かつて狙撃兵だった経歴を持つピートは彼らの行動を読み決死の賭けに出る。アクションは地味だが、ピートが覚える、少しずつ締め上げられるような絶望と怒りがリアルに再現されていた。

監督  アンドレア・ディ・ステファノ
出演  ジョエル・キナマン/ロザムンド・パイク/コモング/アナ・デ・アルマス/クライブ・オーウェン
ナンバー  287
オススメ度  ★★★


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