こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

KIN/キン

f:id:otello:20191206145113j:plain

廃工場で拾った銃器は、サイバーパンク映画に出てきそうなシンプルな形状。なぜか少年の手には反応し機能的な全貌を露にしてくれる。物語は、ギャングに付きまとわれる継兄弟がクルマで逃走するうちに本物の肉親のような絆を深めていく姿を描く。短慮で無分別な兄と慎み深い弟。トラブルメーカーの兄に従いながらも、弟は未来を信じて希望を膨らませている。そして圧倒的な破壊力を具えた未知の銃器とそれを探索する2人の戦士。ロードムービーにSF的要素を加えた展開は、時に暴力のにおいをちらつかせるが、あくまで残酷描写は控えめで、無垢な少年の心に寄り添おうとする。孤独な少年が父の死という悲劇を乗りこえて他人の温かさに触れ、愛する気持ちを芽生えさせる過程は、彼の成長を見守る気分にさせてくれる。

厳しい継父と暮らすイーライの下に、出所した兄・ジミーが戻ってくる。街を仕切っているテイラーに多額の借金があるジミーは父の事務所のカネを盗もうとするが、テイラーはジミーの父を殺してしまう。

その場でテイラーの兄も死にテイラーは逆上、一足先に逃げたジミーとイーライの後を追う。家族でバカンスと聞かされていたイーライはあの銃器も持って行く。道中立ち寄ったナイトクラブでジミーが地元ギャングと喧嘩を始めたことからイーライは初めて銃器の引き金を引くが、パワーはバズーカ砲並み。調子に乗ったジミーはさらに賭場に押し入り忘れ物を奪い返す。拳銃や小銃とはけた違いの性能の超銃器がこの作品に奥行きを与えていた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

その後、父殺害の容疑で逮捕されたジミーを見つけたテイラーたちが警察署を襲うが、いくら命知らずのギャングでも官憲相手に戦争を仕掛けるのかは疑問。このあたりもう少し説得力がほしかった。イーライを追跡する異次元戦士たちが使う “過去を再生させる装置” やクライマックスの “時間を止める装置” は「ジョジョ」の登場人物が使う “スタンド” そのもの。細部まで洗練された映像は非常にスタイリッシュでクールだった。

監督  ジョナサン・ベイカー/ジョシュ・ベイカ
出演  ジャック・レイナー/ジェームズ・フランコ/ゾーイ・クラヴィッツ/デニス・クエイド/マイルズ・トゥルイット
ナンバー  289
オススメ度  ★★*


↓公式サイト↓
http://kin-movie.jp/