こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

MANRIKI

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顔デカ顔デカ顔デカ顔デカ……。ファッション雑誌で小顔特集が組まれ、オーディションでは小顔モデルしか採用されない。物語は、顔が大きいコンプレックスを抱く駆け出しのモデルが「小顔矯正整形」で運命を暗転させていく姿を描く。人の美しさは見かけではなく内面にある。だが外見に自信がないせいで自分の美しさを引き出せないのなら、少しはいじってもいいはず。そんな言葉に納得した彼女が受けたのは、万力で頭部を挟んで頭蓋骨を圧縮する過激な施術。望み通りの小顔になった、しかし皮膚が引き攣れた二目とみられない容貌になってしまった。それでも好きな男に付きまとう女の執念がすさまじい。まるでシュールな悪夢を見ているような浮遊感が全編を覆い、小顔にこだわるヒロインの浅薄な思い込みを強烈に皮肉っていた。

小顔整形のためにイケメン整顔師のクリニックを訪れたモデルは、その場で寝台に縛り付けられ強制的に小顔にされる。施術後、モデルは整顔師に恋をするが冷たく拒絶される。

仕事の依頼が来ないのは顔が大きいせいと決めつけ、他の理由を考えないモデル。その妄信が彼女を追い詰めていくのだが、彼女が感じるデカ顔への恐怖が生々しい迫力で再現される。もはやデカ顔には生きる値打ちもないと確信し、プライドを持ってやっているモデルの仕事が顔の大きさというなかなか変えられないところで決まる現実に不満を隠さない。他人にとっては小さなことでも本人にしてみれば人生を左右するほどの重大事、ところが小顔になると、彼女は己の醜さには言及しなくなる。このあたりの価値観の違い、女心の繊細さが興味深かった。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

その後、整顔師は指名手配犯になり逃亡、途中でかかわった美人局と奇妙な共犯関係になる。もはやそのあたりからどういう展開になるか先の予想はまったくつかず、映画は常識の彼我を軽々と飛び越えてしまう。ただ、そこに必然性はなく、“なんか現場のノリで作っちゃいました” 的な緩さが漂っている。もっと小顔願望女の顛末を見たかった。

監督  清水康彦
出演  斎藤工/永野/金子ノブアキ/野替愁平/神野三鈴
ナンバー  294
オススメ度  ★★*


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