こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

影裏

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単身赴任でやってきた見知らぬ町になかなかなじめなかった。職場とアパートを往復するだけの日々だった。そんな時出会ってしまった不思議な魅力の男。物語は、携帯電話は持たないままズケズケと自分の領域に踏み込んでくる男と知り合った青年の、真実を求める過程を描く。突然いなくなってはふらりと現れる。明るく饒舌かと思ったら、陰りのある表情を見せる。おおらかな性格かと思えば秘密めいたところもある。親しいはずなのに決して本心はさらさない。彼と交流するうちに、主人公は恋心を抱くようになる。全編を通して不快な不協和音が通奏低音となり、俳優のアップや何気ないショットにも不穏な空気を孕ませる。緊張感に満ちた演出は、現代人の微妙で壊れやすい人間関係の距離感を象徴していた。

医療物資配送センターで働く今野は飄々とした雰囲気を持つ日浅と言葉を交わす。酒を飲むうちに2人は意気投合、釣りを通じて友情を深めている。ところが日浅は誰にも告げずに会社を辞める。

理由を聞いている者はいない。今野は裏切られた気持ちになるが、しばらくして日浅は何事もなかったかのようにひょっこりと今野のアパートにやってくる。営業マンに転職した日浅は上機嫌でほどなく2人の仲も元に戻る。だが以前の日浅とはわずかだが決定的に違っている。今野は違和感を覚えながらも深くは考えない。今野の性的指向も影響を及ぼしているのか一度吹き始めた隙間風は止まらない。やがて些細なことでの言い合いが2人の間にくさびを打ち込む。大人になってからできた友人、お互いに素性を知らないまま付き合う関係に、本物の感情はこもっているのかとこの作品は問う。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

そして3・11が過ぎ、職場の訳知りおばさんから日浅が津波被災地で行方不明になったと教えられる今野。さらに、探り当てた日浅の家族から明かされた衝撃の真実。心に闇がない人間などいない、覗き込んだ深淵から見返されるかのごとき不気味さを松田龍平は繊細に演じる。鼻声でぼそぼそ話す姿は松田優作そっくりだった。

監督  大友啓史
出演  綾野剛/松田龍平/筒井真理子/中村倫也/國村隼/永島暎子/安田顕
ナンバー  271
オススメ度  ★★★


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