こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ビッグ・リトル・ファーム 理想の暮らしのつくり方

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やせた土、枯れた池、伸び放題の雑草。都会に住む夫婦が手に入れたのは農地とは名ばかりの荒れた土地だった。だが彼らはあきらめずに土壌を改良し、水源地から水を引き、家畜を放牧して、様々な農作物が収穫できる耕作地に変えていく。農薬は決して使わない。家畜は基本的に放し飼い。動植物や微生物の力を最大限利用する。その徹底的な有機農法は、化学肥料が生み出さされる19世紀以前の古いスタイルに戻しただけなのに、近未来の農場を見ているようだ。カメラは、そんな農業スタイルを追求するカップルに密着、彼らの地道で想像力豊かな生産現場をレポートする。手間もコストも非常にかかっている。ところが彼らに共感する人々は後を絶たず出荷するとすぐに完売、米国における需要の高さが印象的だった。

飼い犬の吠え声がうるさいとアパート追い出されたジョニーとモリーはLA郊外の広大な休耕地を買う。資金集めは順調、指導者を雇い、1年目は農地に果樹を植える準備に費やす。

家畜やミミズの糞は貴重な肥料となり、自家製の堆肥は木々の成長を促す。ほどなく野生の鳥や獣たちが戻ってくると、木の実をかじられたりカモや鶏がコヨーテに襲われたりカタツムリの大量発生で果樹の葉が全部食べられたりと、悩みの種は尽きない。一方で、最初に飼ったメスブタが17匹もの子を次々に生むシーンは、誕生の神秘とともに母の乳首に群がる赤ちゃんブタのかわいらしい姿が重なり、生きるために人間は他の命をいただいていることを実感させてくれる。数年を経て見事によみがえった緑あふれる農地の幾何学模様は、美しさ以上に生命の力がみなぎっていた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがて、より自然と共生する農場という理想に近づくが、まだまだ課題は山積。それでも、肉食鳥獣で害獣害虫を駆除する方法を生み出し、オーガニックのルールは厳守するジョニーとホリー。さらに干ばつや地下水の枯渇、山火事といった災害に見舞われる。開始から8年、ふたりの壮大な実験に寄り添うカメラの視線はあくまでも優しかった。

監督  ジョン・チェスター
出演  ジョン・チェスター/モリー・チェスター
ナンバー  283
オススメ度  ★★★*


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