こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

一度死んでみた

f:id:otello:20191228172011j:plain

元素周期表が子守歌、白雪姫のキスは人工呼吸、食器は実験器具etc. 何事も科学的に考える薬品メーカー社長の父に対して強烈な嫌悪感を抱く女子大生は「死んでくれ~」と絶唱する。物語は、父の “遺体” を取り戻そうとするヒロインが会社乗っ取りを目論む勢力と闘う過程を描く。遅れてきた反抗期、すべてが気に食わなかった父だったけれど、死んでしまったと聞くとなぜもっと話しておかなかったのかと後悔する。一方で父は、姿を見せられても言葉はかけられない。最初は裏切者をあぶりだすための罠だった。だがはめられたのは自分。父は思いを娘に伝えるために、娘は父の願いを叶えるためにできることをするしかない。堤真一のとぼけた味わいと広瀬すずのとんがった感性が激突するドタバタ劇は最後までテンションマックス、笑いがなかった。

売れないデスメタルバンドのボーカル・七瀬は、父・計が急死したと聞かされる。実は、計は2日間だけ仮死状態になる薬を飲んで社内にいる造反者を特定しようとしていた。

計の秘書・渡部は若返る秘薬のレシピ盗み出し、計を火葬にしようとしている。計の側近・松岡は渡部の陰謀に気づき七瀬に報告、計が生き返るまで時間稼ぎをしなければならない。反発し合っていた2人は協力するが、存在感のない松岡と世間知らずの七瀬ではなかなか太刀打ちできない。それでも、計の “遺体” に寄り添ってクリスマスイブを迎えるうちに、計がいかに愛情深い父親だったかを実感する七瀬。企業買収の方法や葬儀の進め方など細部はかなりいい加減だが、その設定のユルさがかえって映像に余裕を与え、疾走感を加速させていた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

火葬を早めようと “遺体” を奪いに来た渡部一味に対し、ホテルで告別式を開こうとする七瀬。しかも告別式は七瀬のバンドの解散ライブになっている。本当に嫌いなわけではない。ずっと見守ってくれているのも知っている。いなくなって初めて親のありがたさを理解した。ただ、その表現の仕方が気に食わないだけ。人生の目標は思わぬタイミングで見つかると七瀬の決意は教えてくれる。

監督  浜崎慎治
出演  広瀬すず/吉沢亮/堤真一/リリー・フランキー/小澤征悦/嶋田久作/木村多江/松田翔太/妻夫木聡
ナンバー  292
オススメ度  ★★★★


↓公式サイト↓
https://movies.shochiku.co.jp/ichidoshindemita/