こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

パラサイト 半地下の家族

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半地下の部屋の地面と同じ高さに設えられた通気窓から見えるのは、雑然とした路地と立小便する酔っ払い。一方、一面ガラス張りのリビングからは、手入れされた庭園と芝生の上に子供が張ったテントが見渡せる。失業中の家族と成功したIT社長、彼らが窓越しに見ている風景は同じ町とは思えないほどの別世界だ。物語は、富豪一家の家庭教師を頼まれた浪人生が次々を自分の家族を豪邸に送り込み、ささやかな幸せを味わう過程を描く。言葉巧みに雇い主の信用を得、身分を偽った妹・父・母を豪邸に送り込んでいく。その手口は巧妙かつ鮮やかで、綿密な計画を練りリハーサルの上で実行に移せばだれにも疑われない。ところが不運な偶然が彼らの小さな油断に襲い掛かる。「富の再分配」を望んでいるわけではない。ただ最低限の暮らしがしたいと願う姿が哀切を誘う。

女子高生の家庭教師代役を引き受けたギウは高台の豪邸に赴く。そこで長男の美術指導に妹・ギジョンを紹介、父・ギテクが運転手、母・チュンスクが家政婦として雇われるように仕向けていく。

狭い家の中の一番高いところに仕切りもなく便器が鎮座している。下水管からの逆流を防ぐためなのだろう、そのトイレより低いところで寝食する家族は韓国における最底辺の生活を象徴していた。そこから少しでも這い上がろう悪知恵を働かせるが、濡れ衣を着せてやめさせた運転手の行く末をチュンスクが心配するシーンが印象的だ。自己責任が問われる競争社会、負け組から脱出するには別の誰かを引きずり下ろすしかない現実が、人々の良心を曇らせていると訴えていた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

豪邸の秘密が明らかになると、彼らの立ち位置が反転する。彼ら以上に切迫した事情を持つ夫婦との諍い、さらに社長一家の帰宅と、ギテクたちは追い詰められていく。そして迎えたカタストロフ。もはや勤勉や努力では一度落ちてしまった貧困層からは這い上がれない。希望は夢や妄想の中だけでしか抱けない。そんな、救いのない絶望感がリアルな感情を伴って再現されていた。

監督  ポン・ジュノ
出演  ソン・ガンホ/イ・ソンギュン/イ・ソンギュン/ チョ・ヨジョン/チェ・ウシク/パク・ソダム/イ・ジョンウン/チャン・ヘジン
ナンバー  7
オススメ度  ★★★


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